血友病A治療薬として開発中のNXT007、正常レベルの血液凝固能をもたらす可能性を示唆
中外製薬株式会社は6月23日、米国・ワシントンD.C.で開催中の国際血栓止血学会(ISTH:International Society on Thrombosis and Haemostasis)2025年会議において、NXT007の血友病A患者さんを対象とした初めての臨床データである第I/II相臨床試験のデータを発表したと報告しました。
血友病Aは、血液を固めるのに必要な血液凝固第Ⅷ因子が少ない、またはうまく働かないことにより、出血しやすくなる疾患です。
NXT007は、血友病Aで広く使用されているヘムライブラ(一般名:エミシズマブ)を基にした次世代型のバイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)であり、血友病Aを対象に皮下投与製剤として開発が進められています。
NXTAGE試験は、NXT007の安全性、薬物動態、薬力学、有効性を評価する多施設共同第I/II相臨床試験です。このうち、今回データを発表されたパートBは、ヘムライブラによる治療を受けていないインヒビター非保有の12歳以上65歳未満の重症血友病A患者さんに対する反復漸増投与パートです。4つのコホートに分けられた参加者は、4~6週の負荷投与後、4週ごとに異なる投与量で皮下への維持投与が行われました。各コホートで6名以上が16週以上のNXT007投与を受けた後に、主要解析が行われました。
血液凝固第VIII因子に対するインヒビター非保有の血友病A患者さんを対象としたNXTAGE試験パートBでは、高用量(コホートB-3およびB-4)において、非臨床データから予測される血液凝固第VIII因子等価活性の正常レベルを期待できる血中濃度に到達することが確認されました。維持投与期においては、高用量コホート(B-3およびB-4)で治療を要する出血が認められませんでした。年間出血率も、試験前と比較して減少し、コホートB-3では5.44から0、コホートB-4では2.72から0となりました。
NXT007の忍容性は良好であり、有害事象の発現件数に用量依存性は認められず、投与中止に至った有害事象やNXT007に関連する重大な有害事象はありませんでした。また、血栓塞栓事象も認められず、安全性プロファイルは良好でした。
中外製薬の奥田修代表取締役社長CEOはプレスリリースにて、「NXT007について、血友病Aの方々の血液凝固能を正常レベルに近づける可能性が初めて臨床試験のデータにおいて示されたことに大きな手応えを感じています。このデータを受け、血友病Aにおけるヘムライブラとの直接比較を含む3つの第III相試験を来年から開始する予定です。近年の血友病A治療の著しい進歩を受けて、より一層効果的で使いやすい治療法への期待が高まっています。一日でも早く本剤を必要とする方々にお届けできるよう、ロシュと連携して開発に注力してまいります」と述べています。