新生血管を伴う網膜色素線条に対するバビースモの国内第III相試験結果が日本眼科学会で発表
中外製薬株式会社は4月17日、VEGF/抗Ang-2 ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「バビースモ硝子体内注射液120mg/mL[一般名:ファリシマブ(遺伝子組換え)](以下、バビースモ)」について、新生血管を伴う網膜色素線条を対象とした国内第III相臨床試験(NIHONBASHI試験)の結果が、第129回日本眼科学会で発表されたとお知らせしました。
網膜色素線条は、網膜の一部が断裂し、眼底に色素線条がみられる疾患です。無症状であることが多いですが、視力低下や歪みといった症状を引き起こします。現在、日本国内においては、新生血管を伴う網膜色素線条に対する承認された治療薬はありません。
バビースモは、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)を中和することにより、視力を脅かす多くの網膜疾患の原因である2つの経路を標的とし阻害する、眼科領域において承認された初のバイスペシフィック抗体です。
NIHONBASHI試験は、新生血管を伴う網膜色素線条患者さん24例を対象とした国内多施設共同オープンラベル単群第III相臨床試験です。同試験では、患者さんに対してバビースモが4週間隔で3回投与され、その後は4週間隔の来院時に疾患の活動性が評価され、必要に応じてバビースモが投与されました。
主要評価項目である12週時点におけるベースラインからの平均視力改善効果は+5.8文字(90%信頼区間:3.0~8.5文字)であり、事前に規定された臨床的に意義の高い閾値である0文字を90%信頼区間の下限が上回ったことから、統計学的に有意な視力改善効果が示されました。また、副次評価項目の一つである中心領域網膜厚のベースラインからの変化量は、12週時点において−106.4µm(マイクロメートル)でした。
バビースモの忍容性はおおむね良好であり、安全性プロファイルはこれまでに報告されているものと一致し、新たな安全性上の懸念は認められませんでした。試験眼における有害事象は20.8%(5/24例)に認められましたが、重篤な有害事象や治験薬の投与中止、治験中止に至った有害事象はありませんでした。眼以外の有害事象は50.0%(12/24例)に認められましたが、同様に治験薬の投与中止や治験中止に至った有害事象はなく、重篤な有害事象2例においてもバビースモとの因果関係は認められませんでした。今回の試験結果は、新生血管を伴う網膜色素線条に対する新たな治療選択肢となる可能性を示唆しており、今後の承認審査の動向が注目されます。
中外製薬の代表取締役社長CEOの奥田修氏はプレスリリースにて、「本試験結果により、国内で承認された治療薬がない網膜色素線条に対して、バビースモは初めての治療薬となることが期待されます。現在、優先審査のもと、承認審査が進められており、治療を待ち望む患者さんに一日も早く本剤をお届けできるよう、日本での承認取得に向けて尽力してまいります」と述べています。