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肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬WINREVAIR、第3相試験で肺動脈性肺高血圧症の進行リスクを大幅に低下させることが明らかに

米メルク社は3月31日、最大耐量のバックグラウンド治療を受けている死亡リスクの高いWHO機能分類(FC)IIIまたはIVの肺動脈性肺高血圧症(PAH Group 1 PH)の成人患者を対象として、WINREVAIRソタテルセプト)をプラセボと比較評価する第3相ZENITH試験の結果を初めて発表しました。

肺動脈性肺高血圧症(指定難病86、PAH)は、心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)の血圧が高くなり、呼吸困難や疲労感などの症状を引き起こす進行性の疾患です。重症化すると、心不全や突然死に至ることもあります。これまでにも治療法は存在しましたが、予後不良な患者さんも多く、新たな治療法の開発が強く望まれていました。

第3相ZENITH試験は、既存の肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療を受けているにもかかわらず、死亡リスクの高いWHO FC IIIまたはIVに分類される成人患者さんを対象に実施。平均10.6カ月(0.3〜26.1カ月)の追跡期間において、WINREVAIRを投与された患者群では、疾患状態の悪化または死亡イベント(全死亡、肺移植、肺動脈性肺高血圧症(PAH)悪化による24時間以上の入院)の発生率が17.4%(86人中15人)であったのに対し、プラセボ群では54.7%(86人中47人)と大幅に低い結果となりました。この結果は、統計学的にも非常に有意であり(p<0.0001[片側])、WINREVAIRが肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者さんの予後改善に大きく貢献する可能性を示唆しています。

主要評価項目においては顕著な有効性が示されましたが、主な副次評価項目である全生存期間については、中間解析における統計学的有意性の基準(p<0.0021)には達しませんでした(HR=0.42 [95% CI,0.17-1.07];p=0.0313])。その他の副次評価項目ではWINREVAIR群で数値的な改善が見られましたが、事前に規定された統計的手順に基づき、正式な検証は行われていません

University Paris-SaclayおよびInserm Unit 999のHospital Bicêtre (AP-HP)の呼吸器・集中治療医学部門に所属するマーク・アンベール氏はプレスリリースにて、「ZENITH試験は、主要評価項目として、全死亡、肺移植、またはPAHによる入院といった重要なアウトカム指標のみを評価した初のPAH臨床試験です。WINREVAIRがこれらの複合的な評価項目に対し、有意かつ臨床的に意義のある影響を与えることが示された今回のデータは、これまでの臨床開発プログラムで蓄積されたエビデンスと合わせて、WINREVAIRが幅広いPAH患者さんの診療を大きく変える可能性を示唆しています」と述べています。

また、メルク社の研究開発本部シニアバイスプレジデント兼グローバル臨床開発責任者、チーフメディカルオフィサーであるエリアブ・バール氏は、「ZENITH試験では、WINREVAIRを投与した患者さんにおいて、全死亡、肺移植、およびPAHの入院という複合エンドポイントのリスクがプラセボと比較して76%低下するという優れた結果が得られました。この改善は治療の早期から認められ、試験期間を通じてその効果が増大しました。ZENITH試験は、非常に優れた有効性が認められたために早期終了した初のPAH臨床試験であり、PAHコミュニティーに希望をもたらす臨床研究における重要な節目となります」と強調しました。

なお、同研究の成果は、American College of Cardiology’s Annual Scientific Session and Expo(ACC.25、米国心臓学会学術集会)のLate Breaking演題として口頭発表され、同時に「The New England Journal of Medicine」に掲載されました。

出典
MSD株式会社 プレスリリース

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