全身型重症筋無力症(gMG)治療薬ニポカリマブ、長期的な症状コントロールを示す
米Johnson&Johnson社は4月8日、抗体(抗AChR抗体、抗MuSK抗体、抗LRP4抗体)陽性の成人全身型重症筋無力症(gMG)患者さんの幅広い集団を対象に、開発中であるニポカリマブの有効性および安全性を評価する第III相Vivacity-MG3二重盲検試験、および現在進行中の非盲検継続試験a(OLE)の追加解析の結果を発表しました。
重症筋無力症(指定難病11、MG)は、末梢神経と筋肉の接ぎ目で起こる異常により、全身の筋力低下、易疲労性などを認める自己免疫疾患です。重症筋無力症(MG)患者さんの85%が、全身型重症筋無力症(gMG)と言われています。抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体、抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体、抗LRP4抗体などの自己抗体が関与することが知られています。
今回の発表は、第III相Vivacity-MG3試験とその後の非盲検継続試験(OLE)におけるデータに基づいたものです。
Vivacity-MG3試験は、これらの抗体陽性の成人全身型重症筋無力症(gMG)患者さんを対象に、ニポカリマブと標準治療(SOC)の併用効果をプラセボ(偽薬)とSOCの併用効果と比較する二重盲検試験として実施されました。続く非盲検継続試験では、二重盲検試験に参加した患者さんを対象に、ニポカリマブの長期的な安全性と有効性が評価されました。
解析の結果、ニポカリマブとSOCを併用した患者群では、総IgG濃度の低下が持続し、84週間にわたり、重症筋無力症日常生活動作(MG-ADL)スコアおよび定量筋無力症(QMG)スコアの改善が維持されました。MG-ADLスコアは、患者さんの日常生活における症状の程度を評価する指標であり、QMGスコアは、医師が患者さんの筋力や機能を評価する指標です。
さらに、非盲検継続試験のベースライン時にステロイド薬を投与されていた患者さんのうち、45%がデータカットオフ時点でステロイド薬の減量または中止に成功しました。これらの患者さんにおけるプレドニゾンの平均使用量は、23mg/日から10mg/日に減少しました。ニポカリマブの安全性プロファイルは、試験期間を通して一貫しており、良好な忍容性が示されました。
二重盲検試験における別の結果では、ニポカリマブとSOCの併用群は、プラセボとSOCの併用群と比較して、22週および24週までにQMGスコアが統計的に有意に改善しました。また、ニポカリマブ併用群では、20週の時点で症状の改善(QMGスコアが3点以上改善)が持続している可能性が、プラセボ併用群の4倍高いことが示されました。試験期間の75%以上にわたりQMGスコアの改善が認められた患者さんの割合も、ニポカリマブ群の方がプラセボ群よりも有意に高い結果となりました。QMGスコアが3点以上減少することは、嚥下や咀嚼といった日常生活動作の改善につながる、臨床的に意義のある変化とされています。
Johnson&Johnson Innovative Medicine Autoantibody Portfolio Vice PresidentかつでMaternal Fetal Immunology Disease Area LeaderのKatie Abouzahr M.D.はプレスリリースにて、「gMG患者さんは、嚥下障害、発語障害、筋力低下など、日常生活においてさまざまな困難に直面しています。これらの課題に対処し、持続的な症状コントロールと長期的な安定性をもたらす可能性のある効果的な治療薬が更に必要とされています。今回の結果は、gMGをはじめとする自己抗体疾患とともに生きる患者さんのために、革新的な治療薬を開発するという私たちのコミットメントを更に強調するものです」と述べています。
なお、今回の解析結果は、米国神経学会(AAN)の2025年年次総会で発表されました。また本学会では、第III相Vivacity-MG3試験の二重盲検試験におけるQMGスコア改善に関する口頭発表も行われました。