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核酸医薬(SSO)を活用し、た小児難病シトリン欠損症に対する新たな治療法の開発に成功

東京慈恵会医科大学は3月12日、シンガポール科学技術研究庁と米国マウントサイナイ医科大学のグループとの国際共同研究により、核酸医薬スプライシング制御オリゴヌクレオチド(SSO)を活用し、遺伝性疾患である小児難病シトリン欠損症に対する新たな治療法の開発に成功したと発表しました。

シトリン欠損症(指定難病318)は、体内でシトリンというタンパク質を上手く作れないことが原因で引き起こされる遺伝性の疾患です。尿素サイクル異常症の一つに分類されます。

今回、研究グループは、尿素サイクル異常症の8疾患(OTC欠損症、NAGS欠損症、CPS1欠損症、シトルリン血症1型、ASL欠損症、高アルギニン血症、HHH症候群、シトリン欠損症)の原因となる遺伝子に対し、深部イントロン変異を効率よく検出する遺伝子パネル「Prune」を開発しました。従来の全ゲノム解析に比べて、格段に高精度なデータを取得したとしています。

画像はリリースより

また、SLC25A13変異c.469-2922G>Tに対する核酸医薬SSOの開発と有効性・安全性評価を実施。深部イントロン変異を日本人シトリン欠損症患者さん3人から検出し、この変異が、SLC25A13mRNA内のエクソン5とエクソン6の間に偽エクソンを挿入するスプライシング異常を引き起こすことで、シトリン欠損症を発症させることを証明し、新たなSSO治療のターゲットとなる可能性が示されました。

研究グループは、複数の化学修飾とRNA配列の組み合わせを用いて、合計23種類の SSOを設計。患者由来iPS細胞から作製した肝細胞(iHeps)を用いた機能評価を実施し、SSOが正常なSLC25A13のmRNAおよびシトリンタンパク質の発現が回復することを確認しました。さらに、iHepsおよびminigeneベクターを用いた解析によって、シトリン欠損症の病態である尿素合成やアンモニア解毒機能の障害を、SSO投与が改善させることを明らかにしたとしています。

このSSOの安全性評価では、2 種類の用量のSSOを変異を含む minigene ベクターを注入したモデルマウスに頻回投与したところ、安全性の指標となる急性や肝毒性や炎症は認めなかったといいます。

以上の研究成果より、従来の検出法では見つけることができない変異を持つ尿素サイクル異常症の患者さんに対し、Deep-intronic遺伝子パネル「Prune」を活用することで、より低侵襲性で有効性の高い新規治療法の実現が期待されます。

なお、同研究の成果は、「Journal of Hepatology」に2月18日付で掲載されました。

出典
東京慈恵会医科大学 プレスリリース

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