視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)発症に関わる遺伝子変異とその変異が影響を及ぼす細胞種を解明
大阪大学は2月25日、日本人の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)発症に関連する生殖細胞系列変異と体細胞変異、及びこれらの変異が遺伝子発現量に変化を及ぼす細胞種を、GWASメタ解析によって明らかにしたと発表しました。
視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、主に、脳や脊髄、視神経に炎症が起きる自己免疫疾患です。発症に関する遺伝的背景については不明な点が多くあります。
今回、研究グループは、日本多発性硬化症/視神経脊髄炎スペクトラム障害バイオバンク(Japan MS/NMOSD biobank)と協力施設から収集した日本人の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者さん240名のゲノム情報を用いてGWASメタ解析を実施しました。

その結果、これまでの研究で報告されていた主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)領域に加えて、6番染色体長腕の6q27という遺伝子座に、新規の関連シグナルを認めました。6q27で最も強い関連が見られた生殖細胞系列変異はCCR6遺伝子の13kbp上流に位置していました。また、今回の解析結果とPBMCのシングルセルRNA-seq情報を統合することで、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の発症に関連する生殖細胞系列変異がCD4+T細胞のサブグループにおいて、疾患特異的に遺伝子発現を変動させることを解明しました。

さらに、ゲノム情報から染色体レベルでの体細胞変異である体細胞モザイク(mCA)を検出し、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)と血液腫瘍、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)以外の自己免疫疾患でその頻度を比較。その結果、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者さんは、他の自己免疫疾患と比較してmCAを有するリスクが非常に高く、血液腫瘍にも匹敵しました。また、mCAが検出された視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)患者さんのシングルセルRNA-seqを解析した結果、細胞種特異的なmCAの集積が起こることを見出しました。さらに、体細胞変異を有する血液細胞において免疫応答に関連した遺伝子発現量の変化が起こっていることを発見しました。
以上の研究成果より、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の病態解明、新たな治療薬やワクチン開発につながることが期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、「Cell Genomics」に2月22日付で掲載されました。