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SOD1遺伝子バリアントを持つ家族性筋萎縮性側索硬化症の特徴が明らかに、遺伝子治療薬の改良・開発につながる可能性

東北大学の研究グループは11月5日、東北大学神経内科で収集した家系において大規模な遺伝子解析を行い、日本人の家族性筋萎縮性側索硬化症の30.6%を占めるSOD1遺伝子バリアント(変異)を明らかにしたと発表しました。

筋萎縮性側索硬化症(指定難病2、ALS)は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく疾患です。発症から平均3~5年ほどで呼吸筋の麻痺が生じます。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの約10%は家族性であり(家族性筋萎縮性側索硬化症)、1993年に発症に関わる遺伝子としてSOD1遺伝子が同定されました。世界的に、家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)におけるSOD1遺伝子バリアントは高い割合をしめており、日本を含むアジアでおよそ30%、欧州でも12%を占めます。

これまでに200種類以上のSOD1遺伝子バリアントが報告されており、遺伝的要因に基づいて筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明と治療法の開発が行われてきました。2023年には初めて、SOD1遺伝子を有する成人の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する遺伝子標的治療薬「トフェルセン」が米国で承認。2024年5月に日本国内でも承認申請が行われ、臨床応用が期待されています。

今回、研究グループは、東北大学神経内科で収集した全160家系の家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、SOD1遺伝子バリアントに焦点を当てた網羅的遺伝学的解析を行いました。その結果、SOD1遺伝子の遺伝型と臨床的特徴を明らかにしました。

全160家系においてSOD1遺伝子バリアント(26種類)を49家系56例(30.6%)に同定し、そのうちの38.8%を占める3つの頻度の高いバリアント(p.His47Arg(H46R)、p.Leu127Ser(L126S)、p.Asn87Ser(N86S))を明らかにしました。北米で最多のバリアントp.Ala5Val(A4V、欧州に多いp.Asp91Ala(D90A)は検出されませんでした。また、これまでに同定されていない新しいバリアントを2家系に見出しました。

画像はリリースより

SOD1遺伝子バリアントを有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんの発症年齢は平均48.9歳で、70%が下肢から発症していました。罹病期間の平均は64.7ヵ月で、臨床的特徴はバリアントの種類によりさまざまで、同一の家系内でも異なる場合がありました。例えば、p.His47Arg(H46R)を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、均一な表現型で、下肢から発症し、進行は遅く、下位運動ニューロン症候が主体でした。p.Leu127Ser(L126S)は、ホモ接合では進行が速いのに対し、ヘテロ接合では進行が遅く、不完全浸透を示すことも明らかにしました。また、p.Asn87Ser(N86S)は、同一の家系内でも表現型と浸透度が異なり、多様性がありました。さらに、4種類のバリアントでは、急速な進行がみられました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、SOD1遺伝子バリアントを有する家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の遺伝学的基盤は、地理的および民族的な背景によって異なることが明らかになりました。この結果は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する遺伝子標的治療の改良・開発につながることが期待されるといいます。

なお、同研究の成果は、「Neurology Genetics」オンライン版に11月1日付で掲載されました。

出典
東北大学 プレスリリース

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