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水疱性類天疱瘡の発症にIL-5が関与していることを発見、副作用の少ない治療薬の開発に期待

北海道大学とかずさDNA研究所の研究グループは9月25日、水疱性類天疱瘡の発症に「IL-5」というサイトカインが関与していることを発見したと発表しました。

類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)として指定難病162に登録されている水疱性類天疱瘡は、皮膚に存在する「17型コラーゲン」に対する自己抗体によって、全身の皮膚や粘膜に水疱・びらん(ただれ)・紅斑(赤い発疹)が生じる自己免疫疾患です。過去の研究により、17型コラーゲンに対する自己抗体の産生には「CD4 陽性 T 細胞」と呼ばれるリンパ球の一種が重要な役割を果たしていることが示されています。現在は、ステロイドによる治療がおこなわれていますが、本来必要な免疫まで抑制されることによる易感染性や、ステロイドによる各種の副作用(糖尿病、骨粗鬆症など)が大きな問題となっています。

17型コラーゲンのNC16Aタンパクをマウスに投与することで、マウスはこれを異物と認識して抗体を産生します。今回、研究グループは、この抗体の産生に関わるCD4陽性T細胞をマウスから抽出して、クローニングを行いました。その結果、17型コラーゲンに特異的に反応するCD4陽性T細胞株を5種類作成することに成功しました。

画像はリリースより

このT細胞株を、17型コラーゲンに特異的に反応するB細胞(抗体産生細胞)と同時にマウスに移入し、どの細胞株が病原性を示すのか、また病原性を示す細胞株と示さない細胞株ではどのような違いがあるのかを検証しました。

画像はリリースより

その結果、5種類のT細胞株のうち、3種類の細胞株ではマウスにびらんや紅斑、痂皮などの皮膚炎症状を誘発しました。他の2種類の細胞株では皮疹は誘発されませんでした。

画像はリリースより

マウスの炎症を起こしている皮膚を採取し、顕微鏡で観察したところ、水疱性類天疱瘡と同様の所見(表皮下の水疱、好酸球の浸潤)が認められました。また、いずれのマウスからも、17型コラーゲンに対する自己抗体が検出されました。

画像はリリースより

以上の研究成果より、水疱性類天疱瘡の発病過程において、自己抗体が存在するのみでは皮膚に水疱を発症せず、IL-5というサイトカインの存在が発症に重要な役割を果たすことを突き止めました。また、IL-5の働きを抑えることによって、実験動物に生じた水疱性類天疱瘡の症状を軽減させられることも証明しました。

今回の研究で得た病原性細胞株の遺伝子配列をもったマウスを作製することにより、水疱性類天3/6疱瘡や毛包性疾患といった、17型コラーゲンが関与する疾患の病態の解明や、より副作用の少ない治療法の開発に有効に活用されることが期待されるといいます。

出典
北海道大学 プレスリリース

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