間質性肺炎の進行性を血清細胞外小胞中SP-B測定で予測
大阪大学は6月11日、間質性肺炎において、進行性の予測に有用な新規バイオマーカーとして”肺サーファクタント蛋白B(SP-B)”を同定したと発表しました。
間質性肺炎は、肺の間質に炎症や損傷が起こる疾患です。近年、抗線維化薬の有効性が示されていますが、一度生じた肺線維化を正常に戻すことは難しく、進行を抑えるために早期治療が望まれています。線維化の進行は個人差があり、進行の速い患者さんの早期発見が難しく、線維化進行を予測することが可能なバイオマーカー開発が課題でした。
今回、研究グループは、新規メッセンジャーとして注目されている細胞外小胞(エクソソーム)の最新プロテオミクス(蛋白網羅的解析)により、血液中の細胞外小胞から2000種類以上に及ぶ膨大な蛋白を捉え、肺線維化の病態や進行と密接に関わるバイオマーカーを世界で初めて同定することに成功しました。
細胞外小胞中のSP-Bは従来のバイオマーカーである血清KL-6やSP-Dよりも間質性肺炎の病勢と強く相関を示し、進行性リスクの高い患者さんを早期に捉えることが可能でした。さらに、シングルセル解析などを駆使して、SP-Bの体内動態の検討からSP-B産生細胞を同定し、SP-Bがリキッドバイオプシー(液体生検)として肺線維化を反映していることを示しました。
これまで、少なくとも半年から1年程度の経過観察を行い、間質性肺炎の進行速度を見極めてから、進行が速い患者さんにのみ抗線維化薬を投与する例がほとんどでした。以上の研究成果より、血清細胞外小胞中SP-Bを測定することで、進行性の間質性肺炎患者さんを早期に同定可能となり、抗線維化薬などの早期治療によって予後を改善することが期待されるといいます。
なお、同研究の成果は、生物医学研究の米国誌「JCI insight」オンライン版に6月11日付で掲載されました。