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筋萎縮性側索硬化症(ALS)の脂質代謝に重要なSPTLC2遺伝子を発見

東京大学大学院医学系研究科の研究グループは2月16日、脂質代謝に関わる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新規原因遺伝子の同定に成功したと発表しました。

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、筋肉を動かし、運動をつかさどる神経である運動ニューロンの選択的な変性・脱落から、手・足・のどの筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだん痩せて力がなくなっていく神経変性疾患です。進行性の疾患であり、発症から3~5年で呼吸不全から死亡または人工呼吸器の装着が必要になることもあります。

一般的に筋萎縮性側索硬化症(ALS)の5~10%は家族歴のある家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)とされていますが、残りの大多数は家族歴のない孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)と考えられています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、55~75歳で発症する確率が高いですが、40歳未満で発症する場合もあり、多彩な臨床病型を呈することも報告されています。現在、根治療法が確立していない筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する病態に応じた治療法を開発するためにも、発症機序を解明し、新規原因遺伝子の同定することは重要な課題でした。

今回、研究グループは、若年発症の家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の家系に注目し、発症者および非発症者を対象に全エクソンを読むエクソーム解析を実施しました。

その結果、若年発症の筋萎縮性側索硬化症(ALS)に前頭側頭型認知症(FTD)を合併する複数家系において、スフィンゴ脂質の代謝に重要な役割をもつセリンパルミトイル転移酵素(serine palmitoyltransferase:SPT)をコードするSPTLC2(serine palmitoyltransferase long chain base subunit 2)遺伝子の病原性変異を初めて同定しました。さらに、若年発症の孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)症例について、発症者および非発症の両親のエクソーム解析データに基づくトリオ解析を実施したところ、新生突然(de novo)変異としてSPTLC2遺伝子の新規変異(p.Met68Arg)を検出しました。

画像はリリースより

さらに、SPTLC2遺伝子変異を持つ筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者さんのスフィンゴ脂質の合成亢進の有無を調べるため、同一家系内で変異を有する筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症者と、変異を有しない非発症者から血漿検体を採取し、脂質分析を実施しました。

その結果、変異を有する発症者群において、血漿中のスフィンガニンやセラミドの有意な増加が観察されました。このことは、SPTの活性亢進により、スフィンゴ脂質の産生増加を反映したものだと考えられました。

画像はリリースより

また、今回同定したSPTLC2遺伝子変異を有する若年発症の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の全症例で、前頭側頭型認知症(FTD)を示唆する認知機能低下が認められました。変異による脂質代謝異常が、若年発症の筋萎縮性側索硬化症(ALS)のみならず前頭側頭型認知症(FTD)などのより幅広い臨床症状に寄与する可能性があります。

以上の結果から、若年発症の筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の原因としてSPTLC2遺伝子を新たに同定し、変異を有する患者におけるスフィンゴ脂質の代謝異常が発見されました。SPT関連遺伝子が筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態に重要な役割を果たし、特にスフィンゴ脂質の代謝異常が筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態メカニズムに深く関与していることが明らかになりました。

さらに、今回脂質代謝の障害と筋萎縮性側索硬化症(ALS)発症を関連付ける病態メカニズムを遺伝学的に解明したことにより、特定の脂質代謝異常を是正することが新たな筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療の選択肢となり、今後の治療法の開発にもつながることが期待できるといいます。

出典
東大病院 プレスリリース

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