【欧州】慢性炎症性脱髄性多発根神経炎に対する唯一の皮下注用人免疫グロブリン製剤HYQVIAが維持療法としての承認取得
武田薬品工業株式会社は1月29日、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)のあらゆる年齢の患者さんにおける、静注用人免疫グロブリン製剤(IVIG)による療法で安定した後の維持療法として、HYQVIA(皮下注用人免疫グロブリン10%/遺伝子組換えヒトヒアルロニダーゼ)が、欧州委員会(EC)により承認されたと発表しました。
慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)は、末梢神経に炎症が起こることにより、2ヶ月以上にわたり進行性または再発性の経過で、四肢の遠位および近位における進行性の左右対称性の脱力と感覚機能の障害をきたす疾患です。症状が徐々に進行する場合と一旦収まるも再発を繰り返す場合があります。この疾患に対する免疫グロブリン静注(IVIG)療法の役割は十分に確立されており、幅広い免疫調節作用と抗炎症作用により、欧州神経学会と末梢神経学会のガイドラインでは標準治療とみなされています。
HYQVIAは、初めてかつ唯一の慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)に対する促進型皮下注用人免疫グロブリン製剤(fSCIG)です。ヒアルロニダーゼ成分が皮膚と筋肉の間の皮下組織における大量の人免疫グロブリン(IG)の拡散と吸収を促進するため、最長で1か月に1回(2、3または4週ごと)の間隔での投与が可能です。医療従事者による投与、もしくは、医師より適切なトレーニングを受ければ在宅での自己注射が可能です。
今回の承認は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)患者さんの再発予防のための維持療法としてのHYQVIAの有効性と安全性を評価した臨床第3相ADVANCE-CIDP1試験のデータに基づいたものです。 同グローバル試験は、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の確定診断を受け、スクリーニング前の少なくとも3か月間、IVIG療法の用法・用量に変更がなかった成人患者さん132名を対象とした試験です。
その結果、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)の再発率は、HYQVIA群が15.5%、プラセボ群が31.7%であり、HYQVIAの有効性が確認されました。
一方、安全性としてHYQVIAのほうが有害事象の発生頻度は高かったものの、程度が高度および重篤な有害事象は少ない結果となりました。全体として、ADVANCE-CIDP1試験でみられた安全性プロファイルは、既存のEU製品概要(SmPC)と概ね一致していました。
武田薬品工業株式会社のシニア・ヴァイス・プレジデントでありプラズマ デライブド セラピーズ ビジネス ユニットのリサーチ&デベロップメントヘッドであるクリスティナ・アルキメッツ氏は「2024年1月にFDAがHYQVIAのCIDP適応を承認したことに続き、ECによるCIDPに対するHYQVIAの承認は、EU域内でCIDPとともに生きる患者さんに、自宅もしくは医療機関にて最長で1か月に1回の間隔で投与できる有効性が証明された維持療法を提供するための重要な一歩です。このHYQVIAの適応拡大は、神経免疫疾患に罹患する患者さんに免疫グロブリン製剤の効果をお届けし、患者さんの生活を改善し、標準治療を向上させる可能性のある治療選択肢を提供する当社の取り組みを反映しています」と述べています。
なお、HYQVIAは、2013年に原発性免疫不全症(PID)の治療薬としてECから初めて承認され、2020年には続発性免疫不全症(SID)の治療薬として承認されました。