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慢性炎症性脱髄性多発神経炎Chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy

指定難病14

他に、多巣性運動ニューロパチーもあります。

慢性炎症性脱髄性多発神経炎

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病気・治療解説

概要

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)とは、2ヶ月以上にわたり進行性または再発性の経過で、四肢の筋力低下やしびれ感をきたす末梢神経の疾患(神経炎)です。典型的な症状としては、左右対称性に腕が上がらなくなる、握力が低下して物をうまくつかめなくなったり箸が思うようにつかえなくなる、階段がうまく登れなくなる、転びやすくなる、などが挙げられます。また手足のしびれ感やピリピリするなどの違和感を認めることがあります。CIDPを発症する原因は現在もなお不明ですが、末梢神経に対する免疫異常により、神経線維を覆う膜構造(ミエリン)が破壊されることでいろいろな症状が出現すると考えられています。類似の症状をきたす疾患として、ギラン・バレー症候群(GBS)が挙げられますが、大きな違いとして、CIDPの経過が2ヶ月以上慢性と慢性であること、再発と寛解を繰り返す患者さんが多いのに対して、GBSは4週間以内に症状はピークを迎え、その後は再発することはごく稀であることが挙げられます。
CIDPで損傷される末梢神経は主に髄鞘(ミエリン)であり、神経を電線にたとえると電線そのものが銅線、それを覆う絶縁体であるビニール膜が髄鞘です。CIDPは脱髄を特徴ですが、これは銅線を保護するビニール膜の所々が損傷してはがれている状態になります。その損傷の原因はいまのところ自分の髄鞘を標的として攻撃する免疫的な作用(炎症)が推測されていますが、詳細ははっきりしていません。
なお、CIDPの日本語訳は慢性炎症性脱髄性多発神経炎、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎など複数あります。また神経炎をニューロパチーと表現される場合もありますが、これらはすべて同じ疾患を指す用語です。

罹患数

2004年9月から2005年8月の厚生労働省免疫性神経疾患に関する調査研究班による全国調査の結果(2008年報告)によれば、CIDPの有病率は人口10万にあたり1.61人であり、この有病率から算出しますと、当時の日本におけるCIDP患者数はおおよそ2,000症例と推定されます。現在はより感度のよい診断基準が用いられるようになっておりますので、おそらく数千人ほどの患者さんがいると推定されます。

疫学

いままでの疫学的な検討では、男性に若干多い傾向が報告されており、発症年齢は2~70歳までとかなり広い年齢層にまたがることが知られています。ギラン・バレ−症候群との違いとして、上気道感染や下痢などの先行感染がみられない場合がほとんどで、発症に強く関わっている環境的な要因は報告されていません。

原因

発症の原因はまだはっきりしていません。自己の末梢神経、とくに髄鞘を標的に攻撃してしまう免疫異常が強く推定されますが、そのメカニズムの詳細は分かっていません。
推定される原因としては、自己の末梢神経を構成する成分を攻撃する自己抗体(液性免疫)や、マクロファージやリンパ球による末梢神経の傷害(細胞性免疫)などが推定され、少なくともなんらかの免疫機序が関与することは広く受け入れられています。

遺伝

本症が親から子の世代へ遺伝したとする報告はいままでありません。

症状

脊髄から出て主に四肢の筋肉の動きをコントロールする運動神経(これが障害されると四肢の脱力がおこります)、皮膚における触覚や痛覚、また関節の曲がり具合などの位置感覚を担当する感覚神経(これが障害されると四肢のしびれ感や手指のふるえなどがおこります)が障害されることでCIDPの症状が完成します。したがって洗髪の際に腕が上がらない、箸が使いづらい、ボタンやジッパーがうまく扱えない、コインをつまみにくいなどの症状や、くるぶしから先の感覚が鈍い、スリッパが脱げやすいなどの症状がおこります。このような症状は治療が効いて改善しても再発を繰り返すことがあり(再発寛解性)、徐々に障害が蓄積して筋力低下が重症化したり、四肢の筋肉が痩せてくる(筋萎縮)ことがあります。その場合には杖や車椅子での移動が必要となる場合があります。
なお稀ですが脳神経の障害も知られており、しゃべりにくい、表情筋の麻痺などが報告されています。ただし呼吸がしにくいなどの症状はごく稀ですので、その際には他の疾患でないか考慮する必要があります。

治療法

A 副腎皮質ステロイド療法
この治療法は免疫異常を伴う病気(自己免疫性疾患)に対して広く行われている、過剰な免疫反応を抑制するための治療法です。一般には飲み薬を使いますが、症状が重い時や進行が早い場合には点滴で大量に用いる(ステロイドパルス療法)が行われることがあります。さらに点滴での治療後に飲み薬に移行して比較的長い期間(数週間から数ヶ月)継続することもあります。薬の減量には決まった方法はなく、早期に離脱できる患者さんがいる一方で、長い期間減量が難しい患者さんもいます。長期間の投与では糖尿病や脂質異常、骨粗鬆症の合併や易感染性(病原体に対する抵抗力の低下)が問題になります。
一般に小児に対してはステロイド治療の反応性は良いとされますが、成長に伴うホルモン作用に影響を及ぼすことから、副作用に注意しながらの治療が必要です。
B 免疫グロブリン静脈内投与療法
平成11年6月から保険診療の適応となった、CIDPで用いられる治療として最も新しい治療法で、IVIg療法とも与ばれます。点滴製剤を5日間連続して静脈注射する治療法で、初期のアレルギー反応を除けば比較的安全な治療法とされています。製剤は輸血等でプールされた血液を種々の方法で病原体を除去して作られたものです。いままでに国内製薬会社で作られた製剤での感染症による副作用はありませんが、現在の方法で除去できない未知の病原体に対する危険性を念頭におく必要があります。主な副作用は前述のアレルギー反応(アナフィラキシーなどの重篤なものから発疹等の比較的軽度のものまで)ですが、投与後数日間は頭痛をきたすことがあります。
他の治療法と比べての利点は、投与が簡単で血漿交換療法のように特別な施設や機械を必要としない点が挙げられます。体重に応じて投与量が決まることから、低体重の患者さんや小児に対しても投与が可能で、国内外ともCIDPの治療としてはもっともよく使われています。
その他、1回目の投与で効果がなくても、2回目の投与で初めて効果を示す患者さんがいることが報告されています。また本疾患の亜型とされる多巣性運動ニューロパチー(MMN)には副腎皮質ステロイドや血漿交換療法は無効と考えられていますが、唯一IVIg療法は有効とされています。
通常は1クールでの治療で比較的早期(数週間程度)に効果が認められますが、再発をきたした際には再度IVIg療法を行います。IVIg療法は効果が副腎皮質ステロイドより早くに認められる反面、治療後の再発率が高いことが報告されています。なおIVIg治療で治療効果が認められない患者さんには副腎皮質ステロイド療法や血漿交換療法など別の治療法を試みることがあります。
C 血漿浄化療法
血液中の血漿成分に含まれると推定される病気の原因物質を分離、除去したのちに体内に戻す治療法です。血漿分離器により血漿成分のみ入れ替える方法や、病原物質を吸着体で除去する方法があります。血漿浄化療法には専門性の高い施設や専用の機械を必要としますので、治療が可能な医療機関は限られています。
また、体重40Kg以下の小児や低体重の方、心臓や腎臓に障害のある患者さんや高齢者では施行が困難な場合がありますので、その際には副腎皮質ステロイド療法やIVIg療法が優先されることがあります。
D 免疫抑制剤
病気の原因と推測される過剰な免疫反応を抑制する目的で、他の治療法による効果が得られない場合や、なんらかの理由で他の治療を行うことができない患者さんに限り考慮される治療法です。シクロホスファミド(適応外使用)を除き、CIDPの多数の患者さんにおける検証で効果が認められ、保険診療で正式に使用が認められている免疫抑制剤は今のところありません。長期にわたる使用での副作用も重篤なものがあることから、使用には十分な知識が必要な治療法です。

経過

CIDPの経過は治療効果に依存します。一般に再発寛解型の方が、慢性進行型よりも予後は良いとされています。1975年の海外からの報告では、平均7.4年経過した53例のうち、日常生活に支障のない完全回復は4%、車椅子以上の障害をきたしている方が28%と報告されています。ただしその後の早期診断や治療法の改善などにより、1989年に報告された、約3年の経過をみた60例のうち、治療に反応した患者さんは95%と報告されています。
生涯に一回しか発症をみとめない患者さんがいる一方で、再発寛解を繰り返したり、慢性かつゆっくりと症状が進行する患者さんが知られています。このような経過により長期間における予後はさまざまであり、後者の場合には長期にわたり継続的な通院や治療が必要になる場合があります。

※ 難病情報センター(http://www.nanbyou.or.jp/)より、許可をいただき掲載しております。