小児もやもや病における間接血行再建術が脳室吻合チャネルを退縮させ、将来の脳出血の危険を下げる可能性を示唆
東京医科歯科大学は9月22日、小児もやもや病において、間接血行再建術が脳出血の危険が高い血管(脳室吻合チャネル)を退縮させ、将来の脳出血の危険を下げる可能性を示したと発表しました。
もやもや病は、脳の太い動脈が徐々に細くなっていき、脳血流が低下していくことで、それを補うためにもやもや血管と呼ばれる異常血管が形成される病気です。もやもや血管のうち、特に長く発達したものは脳室吻合チャネルと呼ばれ、脳出血の原因となる危険が高いと考えられています。日本国内の患者さんは10万人あたり3~10.5人とまれですが、子どもや30~40代の若い世代でも脳梗塞や脳出血を起こす可能性がある指定難病です。また、もやもや病関連遺伝子として、RNF213遺伝子変異(p.R4810K)が同定されています。
今回の研究では、2011年8月から2021年12月までに間接血行再建術を受けた小児もやもや病患者さん58名(89の大脳半球)を対象に、手術前と手術1年後のもやもや血管、脳室吻合チャネル、脳血流の変化などを比較検証しました。
その結果、間接血行再建術で頭皮や硬膜の動脈が脳の表面で顕著に定着した「手術後効果良好群」の患者さんは74.2%でした。また、88.8%の患者さんで血流不足の症状が改善していました。手術後効果が良好であることは、症状改善と統計学的に有意に関連しており、脳血量が有意に増加した患者さんでは、脳室吻合チャネルは有意に退縮することが明らかになりました。
さらに、手術効果が良好な患者さんの特徴として、男児より女児であること、手術前脳血流量が少ないことが示されました。
脳室吻合チャネルの退縮に関連する因子としては、統計学的な有意差がみられた因子はなかったものの、年齢がより若い患者さんとRNF213 p.R4810K変異を有する患者さんで脳室吻合チャネルが術後に退縮する傾向がありました。
また、今回の研究成果は、間接血行再建術が脳室吻合チャネルを退縮させることが明らかになっただけでなく、将来の脳出血の危険を下げる可能性も示しました。なお、同研究は、小児もやもや病における間接血行再建術と脳室吻合チャネルの関係を調査した世界初の報告となりました。
東京医科歯科大学はプレスリリースにて「間接血行再建術が脳出血リスクの高い脳室吻合チャネルの退縮につながったという結果は喜ばしいものですが、すべての症例で脳室吻合チャネルの退縮が得られておらず、また対象となった小児もやもや病患者さんたちはまだ成人しておらず、脳室吻合チャネルの退縮と成人後の脳出血の関連はまだ調査できていません。本研究グループはこれからも、小児もやもや病患者さんが脳出血を起こすことなく長い人生を過ごしていけるよう、研究を続けて参ります」と述べています。
なお、同研究の成果は、米国脳神経外科学会の機関紙である国際科学誌オンライン版「Journal of Neurosurgery: Pediatrics」に、「迅速に出版すべき研究成果」と認定され、9月22日付で掲載されました。