パーキンソン病の新たな発症メカニズムとして、水素イオンとカリウムイオン輸送異常を発見
富山大学、京都大学と東京慈恵会医科大学は4月24日、パーキンソン病の病因分子の一つである「PARK9」が、水素イオンとカリウムイオンを輸送するタンパク質であることを発見しました。そして、PARK9による水素イオンとカリウムイオンの輸送機能が阻害されると、α-シヌクレインの処理(分解)機能が低下し、細胞内にα-シヌクレインの異常な蓄積が引き起こされるという新しいパーキンソン病発症メカニズムを発見したと発表しました。
パーキンソン病は、脳の異常により、手足のふるえ、バランスがとれない、動作緩慢、筋固縮などの症状が現れる疾患です。α-シヌクレインと呼ばれる病原(変性)タンパク質が、パーキンソン病の患者さんの脳内に異常に蓄積されることで、運動機能を司るドパミン神経細胞が死に至るといわれています。しかし、現段階ではα-シヌクレインが脳内に蓄積するメカニズムの全容は明らかにされていません。
今回、共同研究グループは、PARK9が、細胞内において不要もしくは異常なタンパク質を分解する場であるリソソームに存在し、水素イオンとカリウムイオンを輸送するタンパク質として機能することを発見しましたが、この機能はパーキンソン病の患者さんで報告されている変異によって著しく低下することが明らかになりました。また、消化性潰瘍や逆流性食道炎の治療薬として使用されている酸分泌抑制剤がPARK9のイオン輸送機能を阻害していることも発見しました。PARK9のイオン輸送機能が阻害されることにより、リソソームの分解能力が低下し、α-シヌクレインが異常に蓄積されます。
今回の研究成果により、PARK9における水素イオンとカリウムイオンの輸送機能は、α-シヌクレイン蓄積を防ぐ役割を担っており、パーキンソン病の患者さんでは、この機能が低下することにより、α-シヌクレインの異常な蓄積が起こることが示唆されます。
富山大学はプレスリリースにて「本研究によって、『水素イオンとカリウムイオンの輸送異常がα-シヌクレインの脳内での蓄積の引き金となる』という、パーキンソン病の発症につながる新しいメカニズムが明らかになりました。本成果は、パーキンソン病の発症メカニズムや治療方法の解明に向け、新たな道を切り開くものと期待できます」と述べています。
なお、同研究の成果は、 英国科学誌「Nature Communications」オンライン版に、4月20日付で掲載されました。