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潰瘍性大腸炎とクローン病の発症メカニズムを解明、新たな治療標的「DUBA」を同定

近畿大学は9月29日、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患の発症メカニズムを解明したと発表しました。

この成果は、同大医学部内科学教室の渡邉智裕教授と、同大大学院医学研究科医学系消化器病態制御学専攻の博士課程2年益田康弘氏を中心とする共同研究グループによるもので、日本免疫学会が発行する学術誌「International Immunology」に9月29日付で掲載されました。

炎症性腸疾患(IBD)とは、腸に炎症を起こし、下痢・血便・腹痛などの症状が現れる免疫疾患。炎症性腸疾患(IBD)のうち、指定難病の潰瘍性大腸炎(UC)の国内患者数は約20万人、同じく指定難病のクローン病(CD)の国内患者数は約4万5000人と推定されています。

炎症性サイトカインを中和する薬剤が開発されたことにより、炎症性腸疾患(IBD)患者さんの約50%は症状をある程度コントロールすることができるようになりましたが、多くの患者さんが症状に苦しんでいます。また、炎症性腸疾患(IBD)が長期に及ぶと、大腸がんに繋がるリスクもあるため、新たな治療法の開発が望まれています。

今回、研究グループは、炎症性腸疾患のモデルマウスを用いて、症状悪化の原因が炎症性サイトカインのひとつであるI型インターフェロン(I型IFN)であることを解明。また、炎症性サイトカインのブレーキとして働くNOD2というタンパク質が活性化されると、症状の悪化がほぼ完全に抑制されることを明らかにしました。

このメカニズムを解明するため、細胞内シグナル伝達経路を解析したところ、NOD2が脱ユビキチン化酵素である「DUBA」の発現を増加させ、I型IFNの産生に必要な細胞内分子「TRAF3」の活性化を抑制することを発見。これにより、NOD2がDUBAを活性化し、次にDUBAがTRAF3のユビキチン化を阻害することでI型IFNの産生を減少させ、腸炎の発症を防ぐことを確認したといいます。

画像はリリースより

さらに、潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の患者さんの腸管組織を用いた検討を実施。その結果、活動期の炎症性腸疾患(IBD)の腸管組織では、炎症性サイトカインだけではなく、I型IFN関連炎症因子の発現が上昇しており、これらの産生量は治療によって症状が改善すると減少することが明らかになりました。また、クローン病(CD)では、治療により症状が改善するとDUBAが増加し、DUBAの量はI型IFNと逆相関することがわかったそうです。

今回の研究では、NOD2がTLR9によるI型IFNの産生におよぼす効果を解明し、炎症性腸疾患(IBD)の新たな治療標的としてDUBAが同定されました。研究グループはプレスリリースにて、「完治が難しいとされる炎症性腸疾患の新たな治療法開発につながることが期待されます」と述べています。

出展
近畿大学 ニュースリリース

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