免疫のブレーキ「レグネース-1」の働きを増強、多発性硬化症モデルマウスなどの病状を改善
京都大学は5月13日、免疫細胞の活性化や炎症を抑えるブレーキとしての働きをもつRegnase-1(レグネース-1)のはたらきを増強することで、免疫細胞の活性化を抑え、急性呼吸促拍症候群や、肺線維症、多発性硬化症(MG)モデルマウスの病状を改善する方法の開発に成功したと発表しました。
この研究成果は、同大大学院医学研究科の竹内理医学研究科教授らの研究グループによるもの。国際学術誌「Science Translational Medicine」に5月11日に付けでオンライン掲載されました。
レグネース-1は、RNA分解酵素として働き、サイトカインなど炎症や免疫細胞活性化に関わるタンパク質をコードするmRNAのステムループ構造を認識して分解することで免疫応答のブレーキとして機能しています。しかし、レグネース-1を標的とした免疫疾患制御法は、これまで開発されていませんでした。
今回の研究では、レグネース-1タンパク質が自己mRNAを非翻訳領域に存在する2か所のステムループ構造を介して分解することを利用。レグネース-1の発現を増加させる方法を開発したそうです。
また、レグネース-1 mRNAのステムループ構造を壊すようにアンチセンスオリゴ核酸を設計し、細胞に導入したところ、レグネース-1タンパク質による抑制が解除され、レグネース-1の発現が増加。免疫のブレーキ機能が増強され、急性呼吸促拍症候群や、肺線維症、多発性硬化症(MG)モデルマウスの病状改善が見られたといいます。さらに、ヒト多発性硬化症患者さんにおいて、レグネース-1の血液細胞における発現とMRI検査で認められる病変部位の大きさに逆相関があることも判明しました。
今回の研究成果により、免疫疾患制御法は、ヒトレグネース-1にも応用可能であることも明らかとなりました。研究グループはプレスリリースにて、「将来的には、難治性の炎症性疾患の治療に発展させていく事ができたら良いと考えています」と述べています。