全身性エリテマトーデスモデルマウスの骨髄の自律神経障害と多臓器障害を間葉系幹細胞治療で改善
北海道大学は5月10日、全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスの多臓器障害に骨髄の自律神経障害が関与していることを解明し、薬剤や間葉系幹細胞の髄腔内投与により自律神経障害を改善させると、SLEに伴う多臓器障害も改善することを発見し、さらに3次元ファイバー基質で培養した間葉系幹細胞が多臓器障害への治療効果を高めることも明らかにしたと発表しました。
この研究成果は、同大大学院保健科学研究院の千見寺貴子教授、札幌医科大学医学部解剖学第2講座の齋藤悠城講師らの研究グループによるもの。科学誌「STEM CELLS Translational Medicine誌」2022年4月25日付でオンライン掲載されました。
SLEは、全身のさまざまなところに炎症がおこる自己免疫疾患のひとつであり、皮膚や腎臓、心血管、神経障害などの多臓器障害を引き起こす疾患です。多臓器障害のメカニズムは原因不明な点が多く、病態メカニズムの理解と治療法の開発が課題となっています。
研究グループによると、SLEモデルマウスでは骨髄の自律神経障害があること、さらに薬剤によって自律神経障害を増悪させると、SLEに伴う多臓器障害が悪化すること、この2つが明らかになりました。
また、神経系の再生に効果を示すことが期待される骨髄由来間葉系幹細胞(BMSC)をSLEモデルマウスの髄腔内に投与したところ、皮膚炎、腎炎などの多臓器障害が改善。さらにBMSCを3次元ファイバー基材で培養することで、BMSCは幹細胞性や複数の有効因子の発現を高め、皮膚炎、腎炎などの多臓器障害を改善し、最終的には生存率が改善したといいます。
今回の研究成果について、研究グループはプレスリリースにて、「これらの成果がSLEに伴う多臓器障害の新しい治療法の発展につながることが期待されます」と述べています。