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X連鎖性ミオチュブラーミオパチーが対象の臨床試験、スクリーニングと投薬を自主的に一時停止

アステラス製薬株式会社は9月1日、X連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)患者さんを対象とした遺伝子治療薬「AT132」の臨床試験である「ASPIRO試験」について、自主的にスクリーニングと投薬を一時停止したと発表しました。

この決定は、ASPIRO試験に参加した患者さんにおいて、AT132投与の数週間後に観察された、肝機能検査値の異常という重篤な有害事象(SAE)の報告に基づくもの。同社は自主的にスクリーニングと投薬を一時停止し、このSAEについて米国食品医薬品局(FDA)に報告し、協議を行っているとのこと。なお、現時点では臨床試験の差し止めに関するFDAからの通知は発出されていないといいます。

この患者さんは、一部のXLMTM患者さんでも報告されている間欠的胆汁うっ滞の病歴がありましたが、投薬前の肝超音波検査の結果は正常で、肝機能検査も適格基準の範囲内であることが確認されていました。

ASPIRO試験では、これまでに24人の患者さんがAT132の投与を受けています(1.3×1014 vg/kgの低用量で7人、3.5×1014 vg/kgの高用量で17人)。高用量を投与された患者さんのうち3人が進行性胆汁うっ滞性肝炎、その後に非代償性肝不全を発症し、この肝不全を起因とする敗血症(2人)または消化管出血(1人)で亡くなられています。

同剤については、2020年12月に低用量への変更を含むASPIRO試験プロトコルの変更がFDAによって確認され、臨床試験の差し止めが解除されました。解除後、2021年夏に低用量のAT132を投与された患者さんにおいて、今回のSAEを観察。肝機能検査値の上昇は、投与後1カ月以内に、最初に認められたとしています。

同社はプレスリリースにて、「アステラス製薬は、治験責任医師ともに、本試験に登録されたすべての患者さんの状態をこれまで通り注意深く観察していきます」と述べています。

X連鎖性ミオチュブラーミオパチー(XLMTM)とは
XLMTMは、重度の筋力低下と呼吸障害により、若くして死にいたる重篤で致死的な神経筋疾患。生後18カ月時点の推定生存率は50%とされ、乳児期を過ぎて生存した患者さんでも、10歳までの推定生存率は25%とされています。XLMTMは、骨格筋細胞の正常な発達、成熟および機能に必要なタンパク質の「ミオチュブラリン」の欠損または機能不全をもたらすMTM1遺伝子変異によって発生し、およそ4万~5万人の新生児男子に1人の割合で発症します。

XLMTM治療薬「AT132」とは
AT132は、XLMTMの治療のためのMTM1遺伝子の機能コピーを有するアデノ随伴ウイルス8(AAV8)ベクター。一度の静脈内投与により標的とする骨格筋にAAV8を送り込み、標的組織でミオチュブラリン発現を増加させることで、患者さんの転帰を有意に改善させることが期待されています。

出典元
アステラス製薬株式会社 プレスリリース

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