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新生児スクリーニングで発症前の脊髄性筋萎縮症(SMA)患者さんを発見、遺伝子治療の実施に成功

熊本大学は6月10日、生後5日目に実施される新生児スクリーニングによって脊髄性筋萎縮症(SMA)の患者さんを発見することに日本で初めて成功し、その症状が発現する前に遺伝子治療を行ったと発表しました。

この成果は、同大大学院生命科学研究部小児科学講座の中村公俊教授、KMバイオロジクス株式会社らの研究グループによるものです。

SMAは、運動神経細胞生存遺伝子(SMN遺伝子)の異常に起因して、筋力の低下や筋の萎縮が起こる進行性の難病です。重症の患者さんでは人工呼吸器が必要となり、治療を行わない場合、多くは2歳までに亡くなってしまいます。

これまでSMAは治療が困難な病気でしたが、近年では、スピンラザ(一般名:ヌシネルセンナトリウム)やゾルゲンスマ(一般名:オナセムノゲンアベパルボベク)といったこの病気に対する遺伝子治療薬が開発されています。この遺伝子治療を行うと、正常なSMN遺伝子が患者さんの運動ニューロンで働き、筋力の低下や筋の萎縮を防ぐことができ、完治が期待できます。

しかし、一度SMAの症状が現れると遺伝子治療の効果が乏しくなり、症状の進行を抑えることはできますが、回復させることは難しいことが判明しています。その一方で、症状が現れる前に治療を開始できた患者さんでは、ほぼ正常な発育が認められているそうです。そのため、症状が現れる前にSMA患者さんを発見する手法の確立が望まれていました。

画像はリリースより

今回、研究グループはKMバイオロジクスとの共同研究により、SMAに対する新生児スクリーニングの基盤技術を構築し、熊本県内で新生児スクリーニングを行った結果、SMA患者さんを症状の発現前に診断することに成功。そして、症状の発現前に遺伝子治療を行ったため、高い治療効果が期待されるとしています。

2021年5月現在、日本国内では熊本県のほか、千葉県や兵庫県など限られた地域でのみ、SMAの新生児スクリーニングが行われているとのこと。研究グループは、プレスリリースにて「本研究グループが新生児スクリーニングによってSMA患者を発見し、発症前に治療を行うことができたことで、わが国でもその有用性が示されたと考えます。今後、SMAの新生児スクリーニングを行う自治体が増えることが予想されます。さらにすべて新生児がこのスクリーニング検査を受けられるようになることが期待されます」と述べています。

出典元
熊本大学 お知らせ(生命科学系)

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