1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. レム睡眠とカタプレキシーの筋脱力に共通する神経回路を発見

レム睡眠とカタプレキシーの筋脱力に共通する神経回路を発見

筑波大学の研究グループはマウスを用いて、過眠症であるナルコレプシーに併発するカタプレキシーにみられる筋脱力とレム睡眠に共通する神経回路を発見しました。本研究の成果はナルコレプシーなどの睡眠障害に対する治療法の開発に繋がることが期待されます。

レム睡眠は、睡眠中に脳が活発に動いている一方で筋肉が弛緩している状態です。レム睡眠中は脊髄の運動ニューロンの働きが抑制されることが知られています。運動ニューロンの抑制にはグリシンが関わっていると考えられていますが、レム睡眠時の筋肉の脱力を制御している神経回路は不明でした。一方、ナルコレプシーは日中の強い眠気を特徴とする過眠症のひとつで、興奮など極度な感情の高まりに伴って突然全身の筋力が抜けるカタプレキシーと呼ばれる症状を伴うことがあります。カタプレキシーは、覚醒から強制的にレム睡眠状態に変化する病的な現象だと考えられてきましたが、カタプレキシーに関わる神経回路とレム睡眠に関わる神経回路の関連性は不明でした。

近年、レム睡眠中の筋脱力には延髄腹内側(VMM)の抑制性ニューロンが関与している可能性が考えられています。そこで研究チームは遺伝子を改変したマウスを用いてVMMのグリシン作動性ニューロンを標識し出力先を探したところ三叉神経運動覚、顔面神経、副神経、舌下神経、頚髄から腰髄にかけての脊髄前角に軸索が伸びていました。一方外眼筋を支配している動眼神経、滑車神経、外典神経にはVMMのグリシン作動性ニューロンは伸びていませんでした。また、これらのグリシン作動性ニューロンへの入力源を探したところ脳幹をはじめ多くの領域から信号入力が確認され、特に下背外側被蓋核(SLD)に多くの入力源がありました。さらに、VMMグリシン作動性ニューロンの神経伝達を阻害したところレム睡眠筋肉の活動が確認され、SLDのニューロンを阻害した場合も同様にレム睡眠中の筋脱力が阻害されました。これらの結果はSLD→VMM→運動ニューロンという回路によってレム睡眠時の筋肉の脱力が制御されていることが示唆されました。

出典元
TSUKUBA JOURNAL

関連記事