自然免疫応答分子STINGの活性制御機構を解明
東北大学を中心とする研究グループは、ウイルス感染時に働く自然免疫応答に関わるSTING経路において不要な活性化を抑える仕組みを解明しました。STINGの異常な活性化は自己免疫疾患の発症に関わっていることが知られています。
DNAウイルスに感染すると自然免疫応答としてSTING経路が活性化します。一方でSTINGが異常に活性化するとSTING-associated vasculopathy with onset in infancy(SAVI)やCOPA異常症などの自己免疫疾患や、老化性炎症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の炎症にも関わっていることが知られています。DNAウイルス感染時にSTINGが小胞体からゴルジ体へ移行し、ゴルジ体でパルミトイル化されて下流シグナルが活性化することが明らかになっていますが、ウイルスに感染していない時にSTINGの活性化を抑えておくメカニズムは明らかになっていません。
本研究において、ウイルスに感染しない定常状態ではSTINGが活性化しないように小胞体内に留める仕組みが存在することを明らかにしました。COP-Ⅰ小胞輸送はゴルジ体から小胞体への物質輸送を担っている経路であり、これを阻害するとDNA刺激がなくてもSTINGがゴルジ体に蓄積し炎症反応が起こりました。この結果より、定常状態でもSTINGは一部ゴルジ体へ移動しており、それ以上にCOP-Ⅰ小胞輸送によりSTINGがゴルジ体から小胞体に輸送されることでSTINGがゴルジ体に蓄積しないようになっている仕組みの存在が示唆されました。STINGは自己免疫疾患の発症メカニズムとして注目されており、STINGの活性化過程の理解は新たな創薬に繋がると期待されています。
出典元
東北大学 プレスリリース https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/01/press20210105-01-sting.html