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低酸素性虚血性脳症に対する新規治療の可能性を検討

名古屋大学医学部附属病院の研究チームは、Muse細胞を用いて周産期低酸素性虚血性脳症(HIE)モデルラットの脳神経障害が修復されるメカニズムを解明しました。さらに脳機能障害の改善効果も認められ、今回明らかになったMuse細胞の作用メカニズムを応用し、今後は脳性麻痺などの新しい治療法開発に繋がることが期待されます。

Muse細胞は多能性幹細胞マーカーが陽性の細胞であり、皮膚や骨髄、結合組織など様々な組織に存在しています。体内の様々な細胞に分化可能であり、静脈に投与するだけでいい利便性を持つうえ、腫瘍化リスクが低く低酸素ストレスにも耐性があります。周産期低酸素性虚血性脳症(HIE)は出生前後に脳への血流が滞るために、脳が低酸素状態にになり脳性麻痺や精神発達遅延などがみられます。治療法も限られており、重症例では死に至る場合もあるため新しい治療法の開発が待たれています。これまでに国内ではMuse細胞を用いて、脳卒中、急性心筋梗塞や、表皮水疱症などの難病に対しても治療法の開発が進められています。そこで当研究グループはMuse細胞に着目したHIEによる脳損傷の改善ができないかを検討しました。

研究チームはHIEの疾患モデルラットに対しヒトMuse細胞を静脈内投与し観察しました。また、この際に免疫抑制剤は使用しませんでした。観察の結果、受傷後1カ月、5カ月のいずれの時点でも異常行動、学習障害、運動障害が改善していました。また、受傷後6カ月時点までの長期間、ヒトMuse細胞は損傷を受けた脳組織周辺にのみ生着しており、ラット脳内で神経細胞やグリア細胞に分化していました。この間、Muse細胞の投与による副作用や腫瘍化などは確認されませんでした。今回の研究にりMuse細胞がHIEの新たな治療法となり得ることが示されました。副作用のリスクも少なく比較的安全に投与可能であることから臨床応用を目指してさらなる研究が続けられます。

出典元
名古屋大学 研究教育成果情報

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