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京都大、肺線維症の治療標的新規候補を同定

京都大学は2020年10月14日、RNA分解酵素であるRegnase-1が肺線維化を抑制していることを見出したと発表しました。Regnase-1は2型自然リンパ球の機能抑制を介して肺の線維化を抑制しているとのことです。今回の研究結果は、Regnase-1が今後の肺線維化治療の新たな治療標的になる可能性を示唆しています。

背景-肺線維症とRegnase-1

肺線維症は肺の線維化によって肺が硬くなるために呼吸しづらくなる疾患です。膠原病に起因するもののほか、発症の原因がわからない肺線維症(特発性肺線維症)もみられます。特発性の肺線維症は治療法も少なく診断後の生存期間が3~4年とも言われています。2型自然リンパ球(ILC2)はリンパ球の一種で、生理活性物質であるサイトカインを多量に生産するためアレルギー性疾患にも関わっています。Regnase-1はmRNA分解酵素であり、炎症に関わる物質のRNAを分解して炎症反応を抑制することが知られています。Regnase-1欠損マウスは肺に強い炎症がみられることが知られていますが、その詳細な発症メカニズムは明らかになっていませんでした。

結果-マウスおよびヒトで Regnase-1とILC2の相関を確認

マウスを用いた観察の結果、Regnase-1の欠損により肺ではILC2が著しく増加することが確認されました。肺からILC2のみを単離培養した結果、Regnase-1欠損によるILC2の細胞増加は細胞増殖に関わる分子(ICOS)の上昇によって引き起こされることが示唆されました。加えて、Regnase-1の欠損は炎症反応を惹起する分子(KLRG1)の発現亢進にも関わっていました。そこで、Regnase-1の欠損がどのような疾患と関連しているかを遺伝子レベルで解析した結果、これまでに報告されている気管支喘息などに加えて肺線維症との関連も示されました。京都大学医学部附属病院内で過去に採集された特発性肺線維症患者の細胞を用いた解析の結果、Regnase-1の減少に伴いILC2が増加することが明らかになり、血液中のILC2が多い患者は生存期間が短いことが示されました。

出典元
京都大学 研究成果

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