1. HOME
  2. 難病・希少疾患ニュース
  3. 特発性肺線維症の進行を予測可能な指標を新発見

特発性肺線維症の進行を予測可能な指標を新発見

名古屋大学をはじめとする研究グループは、特発性肺線維症患者の血中にあるミトコンドリアDNAを用いて、疾患の進行および急性増悪を予想し得ると発表しました。特発性肺線維症の症状は個人差が大きく、これまで疾患の進行や合併症の予測は困難と考えられてきました。しかし本研究により、血液中のミトコンドリア由来DNAの増加により、その後の急性増悪を予測できることが示されました。

背景-肺が硬くなり呼吸がしづらくなる疾患

特発性肺線維症は、指定難病である特発性間質性肺炎に分類される呼吸器疾患です。酸素と二酸化炭素のガス交換を行う肺胞の周りの組織が線維化し、硬くなることで呼吸がしづらくなります。国内には1万人前後の患者がいると推定されています。中央生存期間は約3年と言われており、特に年間5%から10%の患者では、突然呼吸不全に陥って死に至る急性増悪がみられます。急性増悪の予想は困難なうえ、これまでに効果的な予防法や治療法は開発されていませんでした。そのため、特発性肺線維症の病態進行および急性増悪を予測し得るバイオマーカー (指標) が求められていました。

結果と展望-特発性肺線維症の予後を予測し得るミトコンドリアDNA

研究には、特発性肺線維症と診断されてから治療を始める前の70人の患者の血液 (血清) が用いられました。血液中のミトコンドリア由来DNAを測定した結果、DNAのコピー数が多い患者は、増加していない患者と比べて、高い頻度で採血後1年以内に急性増悪を発症していることがわかりました。また、「肺活量の10%以上の低下」・「死亡」・「急性増悪の発症」のいずれかに着目して解析すると、血清中のミトコンドリアDNA測定により採血後1年以内の疾患進行を予測し得ることが明らかになりました。さらに、ミトコンドリアDNAを用いた疾患進行の予測精度は、これまでに特発性肺線維症で用いられてきた指標よりも優れていることがわかりました。血清中のミトコンドリアDNAによる疾患予後の予測の有効性が示された本研究により、今後は特発性肺線維症に対する臨床検査の有用性が検討されます。さらにミトコンドリアDNAと特発性肺線維症の病態との関連性が解明されることで、新たな治療法の開発にも繋がると期待されています。

出典元
名古屋大学 研究成果情報

関連記事