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日本における重症型ミトコンドリア肝症の臨床像をはじめて明らかに

千葉県こども病院遺伝診療センターや国立成育医療研究センターをはじめとする研究グループは、日本国内における脳肝型ミトコンドリアDNA枯渇症候群 (MTDPS) の患者を対象とし、臨床像、分子学的特性、肝移植後の予後検討を行った結果を発表しました。本研究はアジアで見ても初となるほどの大規模な調査であり、MTDPSの原因遺伝子も同定されました。

小児期から重症となるミトコンドリア病

ミトコンドリアは細胞内に存在し、酸素からエネルギーを生み出す機能があります。ミトコンドリアに異常が起こり働きが低下すると、細胞はエネルギーを活用できずに働きが悪くなります。このように、ミトコンドリアの機能が低下し影響が現れる疾患をまとめてミトコンドリア病と呼びます。肝障害がみられる一部のミトコンドリア病はミトコンドリア肝症と呼ばれ、小児ミトコンドリア病患者の約1割~2割と推定されています。なかでも特に脳肝型ミトコンドリアDNA枯渇症候群 (MTPDS) は非常に重症化することが知られており、乳児期の早いうちから肝不全を引き起こします。ミトコンドリア病に対する治療法は開発されておらず、MTPDSに対する根本的な治療法もありません。海外の研究では肝移植後の5年生存率が30%程度に留まるという報告もあり、有効な治療法の開発が望まれます。そこで本研究では、国内におけるミトコンドリア肝症の患者を対象とした大規模な実態調査を行いました。

重症を呈するミトコンドリア病の臨床像を解明

研究チームは2020年6月までに、ミトコンドリア病と診断された1140例の患者レジストリを作成しました。そのうち107例がミトコンドリア肝症、また、そのうちの23例がMTDPSでした。MTDPSと診断された23例のうち男子11例、女子12例でした。初期症状として成長障害(13例)、嘔吐(8例)、黄疸(4例)が見られ、これらの多くは乳児期の早期から見られていたことが明らかになりました。さらに23例中18例で原因遺伝子が同定され、MPV17遺伝子(13例)、DGUOK遺伝子(3例)、POLG遺伝子(1例)、MICOS13遺伝子(1例)でした。これらの患者のうち肝移植を受けた患者は12例で、そのうち5例(約4割)の患者が生存していました。生後6カ月未満で発症した8例のうち生存していたのは2例である一方、生後6カ月以降に発症した4例のうち3例で生存が見られたことから、発症年齢が遅い方が予後が良い可能性が示唆されました。今回の研究結果より、重症型のミトコンドリア肝症 (MTPDS) の臨床像、分子遺伝学的特徴および肝移植術の長期予後が調べられました。こうした結果より、今後の治療法選択に寄与するだけでなく新たな治療法開発にも繋がると期待されています。

出典元
日本医療研究開発機構

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