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アルポート症候群に対する核酸医薬を用いた治療法開発へ

神戸大学、熊本大学、理化学研究所らの研究グループは第一三共株式会社との共同研究でアルポート症候群に対する核酸医薬を用いた新規治療法の開発を動物モデルで成功したことを発表しました。アルポート症候群は慢性腎炎や難聴、眼の障害などを併発する遺伝性疾患で、国内には1200人程度の患者さんがいると推定されています。

背景-遺伝性の変異による腎疾患

アルポート症候群は腎炎や難聴、円錐水晶体や白内障などの眼の合併症がみられる遺伝性の疾患です。特に女性よりも男性で重症化することが知られており、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に次いで発生頻度の高い遺伝性腎疾患です。アルポート症候群の一種であるX染色体連鎖型アルポート症候群では、男性患者の約90%が40歳までに末期の腎不全へと進行します。現在までに治療法はありません。原因遺伝子に起こる突然変異の違いによって症状の重症度が異なることが知られており、ナンセンス変異など重症型の変異がある場合には、ミスセンス変異など軽症型の変異よりも腎不全に至るまでの期間が短いことが明らかになっています。

核酸医薬を用いた遺伝子治療

アルポート症候群では、原因遺伝子に起こる変異の種類により重症型と軽症型に大別されます。そこで、重症型の変異を軽症型の変異に置き換えることで症状を軽くする試みが行われました。研究チームはまずアンチセンス核酸と呼ばれる核酸医薬を利用し、エクソンスキッピングと呼ばれる原理を用いた変異の置き換えに挑戦しました。アンチセンス核酸は、脊髄性筋萎縮症やデュシェンヌ型筋ジストロフィーなどの遺伝性疾患の治療法としても注目を集めています。原因遺伝子にナンセンス変異が起こると、中途半端なタンパク質しか作られず、そのようなタンパク質は機能しません。この変異箇所に人工的にエクソンスキッピングを誘導することで、弱いながらも機能を持つタンパク質が作られるようになります。実際に、疾患の病態を模したナンセンス変異のあるモデルマウスにこの治療法を行ったところ、機能的なタンパク質が作られるようになりました。また、尿タンパクの漏出を抑制し、腎機能障害も抑えることがわかりました。

今後の展望-ヒトを対象とした治験へ

上記の結果より、核酸医薬を用いてアルポート症候群による腎機能障害を抑制できる可能性が示唆されました。また、疾患モデルマウスの生存期間を顕著に延長することにも成功し、腎病理組織学的にも腎障害の進行を抑制することが示されました。本研究により、重症型の変異を持つアルポート症候群患者を用いた治療の可能性が示唆されることとなりました。今後は、モデル動物を用いた安全性の評価が済み次第、実際の患者を対象とした治験が進められる予定です。

出典元
日本医療研究開発機構 プレスリリース

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