筋萎縮性側索硬化症患者への新しい呼吸理学療法機器に関する論文発表
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)および同病院は、以前より開発・提供を開始していたLIC TRAINER(R)について、筋萎縮性側索硬化症患者(ALS 指定難病2)に対する呼吸療法として強制的な深呼吸(LIC)を測定する新しい肺容量リクルートメント(LVR)機器に関する原著論文を発表しました。
ALSの呼吸機能評価は困難
ALSは筋肉を動かすための情報を伝える神経(運動神経)が障害される進行性の疾患です。脳から発せられる情報が筋肉まで届かないため、徐々に筋肉が痩せていき力が出なくなっていきます。症状の進行が早いことが特徴的で、発症から数年で呼吸不全に至ることが多いとされています。ALSの呼吸困難は肺や胸部の柔軟性が低下することから肺活量が低下し、進行すると人工呼吸器での対応が必要となります。一方、発生や発語、嚥下、咀嚼などにみられる麻痺(球麻痺)が強いと
人工呼吸療法が継続できず、さらに気管切開を行った場合には肺や胸部の柔軟性を確認することすら難しくなってしまいます。
「LIC TRAINER(R)」 の有効性を確認
そこで同研究では、「LIC TRAINER(R)」の有用性を評価を行うこととしました。「LIC TRAINER(R)」は、進行した球麻痺症状や、気管切開にかかわらず肺容量リクルートメント手技として強制的な吸気量(LIC)を測定できます。これまで研究機関で使用されていたLIC機器をNCNPが独自に改良したもので、以下のような特徴を持ちます。(特許出願、商標登録済)
(1)加圧時にリークしないよう高密閉性を付加
(2)高圧がかかった圧を解除する安全弁を装備し、安全性を確保
(3)ALS患者さんが自分で自発呼気弁をリークすることが可能に
研究には、肺活量を測定できない患者、肺活量を測定できるが最大強制吸気量を測定できない患者、最大強制吸気量を有効に測定できる患者の3グループが参加しました。研究の結果、3つ全てのグループで強制的な深呼吸(LIC)の値を測定でき、「LIC TRAINER(R)」を用いることでALS患者の呼吸器の状態を評価可能であり、呼吸療法を実行する際の有用なデバイスとなる可能性が示唆されました。