ふぉんうぃるぶらんどびょうフォンウィルブランド(von Willebrand)病Von Willebrand disease; VWD
小児慢性疾患分類
- 疾患群9
- 血液疾患
- 大分類21
- 先天性血液凝固因子異常
- 細分類46
- フォンウィルブランド(von Willebrand)病
病気・治療解説
概要
von Willebrand病(VWD)はvon Willebrand因子(VWF)の量的・質的異常を来す遺伝性出血性疾患である。von Willebrand因子(VWF)は分子量約500kDa-20,000kDaに及ぶマルチマー構造を形成する高分子量の糖蛋白質であり、血管内皮細胞や骨髄巨核球から産生される。VWFは血管損傷部位において血小板を内皮下結合組織へ粘着させる機能を有し、一次止血において極めて重要な役割を果たす。VWFは大小様々なマルチマーとして存在するが、高分子量のマルチマーほど止血能が高い。またVWFは血液凝固第Ⅷ因子(FVIII)と結合し血漿中のFVIIIを安定化させる機能も有するため、本症では二次的にFVIIIも低下する。本症の病因・病態は多様で、量的減少症の1型、質的異常症の2型、完全欠損症の3型に分類され、2型には更に2A、2B、2M、2Nの4亜型が存在する。基本的病態はVWFの異常に基づく血小板粘着および凝集障害とFVIII低下である。
疫学
血友病に次いで多い遺伝性出血性疾患であり、平成25年度血液凝固異常症全国調査(厚生労働省委託事業)によると現在本邦には1084人のVWD患者が存在する。一部を除き常染色体優性遺伝形式であるため男女共に発症し、女性の遺伝性出血性疾患の中で最多である。
症状
出血の種類や程度は病型により大きく異なる。1型や2型では鼻出血、口腔内出血、皮下出血、抜歯後止血困難などの皮膚・粘膜出血が中心である。女性では月経過多、卵巣出血、妊婦においては分娩時あるいは分娩後の異常出血を生じる可能性がある。3型は皮膚・粘膜出血に加え関節内出血や筋肉内出血などの深部出血も生じ、出血の程度も重い。
診断
治療
VWDの止血治療は、高分子量VWFマルチマーに富むVWF/第VIII因子濃縮製剤の補充療法と、貯蔵部位の血管内皮細胞からVWFの放出をもたらすデスモプレシン(DDAVP)の緩徐な静注が中心となる。前者は全ての病型に有効である。後者は3型には無効、2B型には禁忌である。薬剤の選択は病型、重症度、出血症状の程度により決定する。VWF/第VIII因子濃縮製剤の投与量は出血の種類や手術の侵襲度により調節し、凝固第VIII因子として20-60単位/kgを止血まで1日1回静注することが基本である。DDAVPは0.2-0.4μg/kgを20mlの生理食塩水に溶解し、10-20分かけて緩除に静注する。DDAVPの効果は個々に大きく異なり、十分な止血効果が得られない場合はVWF/第VIII因子濃縮製剤の投与を行う。DDAVPの使用での注意点として、乳幼児では水中毒、高齢者や高血圧患者においては血圧上昇に注意する。鼻出血、歯肉出血などの粘膜出血の際および抜歯時には抗線溶薬(トラネキサム酸)の併用が有効である。
予後
生命予後は健常成人と同等と考えられている。出血頻度は病型や重症度によって異なるが、概して血友病に比べて少ない。VWD type3では血友病と同様に関節出血を反復するため、関節障害をきたすことがある。
参考文献
・高橋芳右:von Willebrand病. 白幡聡(編):みんなに役立つ血友病の基礎と臨床 改訂版, 医薬ジャーナル社, 東京, pp159-164, 2012
・高橋芳右:von Willebrand病の診断と治療. わかりやすい血栓と止血の臨床, 南江堂, 東京, pp88-90, 2011
・(財)エイズ予防財団 血液凝固異常症全国調査委員会: 血液凝固異常症全国調査, 2014
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