ごくちょうさあしるこえーだっすいそこうそけっそんしょう極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症Very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase (VLCAD) deficiency
小児慢性疾患分類
- 疾患群8
- 先天性代謝異常
- 大分類3
- 脂肪酸代謝異常症
- 細分類44
- 極長鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症
病気・治療解説
概要
細胞内に取り込まれた長鎖脂肪酸は、ミトコンドリア内で脂肪酸の炭素長に応じた各脱水素酵素で順次代謝され、1ステップごとに炭素鎖が2個ずつ短くなってアセチルCoAに至り、エネルギー産生に寄与している。
極長鎖アシルCoA脱水素酵素(very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase: VLCAD)はミトコンドリア内膜上内側に存在する酵素であり、三頭酵素ととともに長鎖脂肪酸のβ酸化を担う。
疫学
わが国における新生児マススクリーニングのパイロット研究(2005年〜2012年)の結果によると約16万人に1人の発見頻度である。遺伝形式は常染色体劣性である。
症状
臨床像は幅広く、新生児期もしくは乳児期早期から重度の心筋症や低血糖をきたし、生命予後の改善が困難である症例から、乳幼児期にライ様症候群で発症する症例、幼児期以降に横紋筋融解症を呈する症例、成人期における筋痛、筋力低下のみの場合もある。タンデムマスによる新生児マススクリーニングの対象疾患である。
診断
『診断の手引き』参照
治療
急性期の治療
急性期は対症的な治療に加え、十分量のブドウ糖を供給し、早期に異化亢進の状態を脱する事が重要である。急性脳症様/ライ様症候群様発作として発症した場合は中心静脈ルートを確保し、グルコース投与量を6-8mg/kg/min以上を目安とする。
慢性期の治療
① 異化亢進の予防
発熱を伴う感染症や消化器症状(嘔吐・口内炎など)の際は、糖分を十分に摂るように指導し、経口摂取が出来ない時には、医療機関に救急受診し、血糖値をモニターしながら早期にブドウ糖を含む補液を行うことは、重篤な発作を防ぐためにも重要である。
② 食事療法
特に乳幼児においては食事・哺乳間隔を短く保ち、飢餓による低血糖を防ぐことが重要である。
1. MCTミルクの使用
上記の生活指導のみで何らかの臨床症状・生化学所見が見られる場合は、必須脂肪酸強化MCTフォーミュラを用いる事も考慮する。
2. 非加熱コーンスターチの使用
夜間低血糖を繰り返す場合、1-2g/kg/回程度を投与する。1歳未満の乳児では膵アミラーゼの活性が不十分であるため、非加熱のコーンスターチは乳児に開始するべきではない。
3. 長鎖脂肪酸の制限
何らかの症状が見られるときは脂質の制限が必要になる。
③ L-カルニチン投与
海外ではL-カルニチン補充は推奨されていない。国内での統一した意見は得られていないが、少なくとも過剰量のL-カルニチン投与は必要ないと考えられている。急性期の静注によるL-カルニチンの投与は禁忌である。
予後
乳幼児期発症例の自然歴が明らかになっていない部分が多く、定見は得られていない。乳幼児期に低血糖やReye様症候群として発症した場合、その程度によって神経学的予後は左右される。また、乳幼児期発症例が次第に筋型の表現型を呈することも経験される。
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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