そうはいじょうみゃくかんりゅういじょうしょう総肺静脈還流異常症Total anomalous pulmonary venous connection
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類46
- 肺静脈還流異常症
- 細分類58
- 総肺静脈還流異常症
病気・治療解説
概要
すべての肺静脈が左房と交通を失い,直接右房または体静脈と交通を有する疾患である。肺静脈が還流する部位によって4つ(I型:上心臓型、II型:心臓型、III型:下心臓型、IV:混合型)に分類される。出生時よりチアノーゼを認める。肺うっ血に伴う重度のチアノーゼと多呼吸を認め、生後早期に死亡することが多い。治療の基本は外科治療で、診断がつき次第、手術をおこなう。外科治療の成績は一般に向上しており、早期死亡は2-15%、10年生存率は90%である。約10%に術後肺静脈狭窄が生じ予後不良の要因となる。
病因
内臓心房錯位症候群に高率に合併することが知られているが、病因は不明で多因子遺伝が想定されている
疫学
先天性心疾患の0.3-2%と報告されている
臨床症状
出生時よりチアノーゼを認める。肺静脈狭窄が早期から出現する場合には、肺うっ血に伴う重度のチアノーゼと多呼吸を認め、生後早期に死亡することが多い。肺静脈狭窄を伴わない場合にも、生後1ヵ月頃には多呼吸、哺乳力低下、体重増加不良が出現する。聴診上はII音の亢進以外に軽度の収縮期雑音を聴取するのみで、チアノーセが軽い例では、多呼吸、体重増加不良などの非特異的な所見しか認めないために診断が遅れることがある。
胸部エックス線では肺静脈狭窄を伴わない場合は、肺血流増加に伴う肺血管陰影の増強と第2弓の突出,右房と右室の拡大を認める。肺静脈が無名静脈に還流する場合、垂直静脈か拡大し雪ダルマ状(snowman sign)となるか, この所見は生後数ヵ月以降に認められる。また、肺静脈か上大静脈に還流する場合、上大静脈部分の突出を認める.肺静脈閉塞の強い場合には、心拡大を伴わすに肺うっ血が著明となり、肺野はびまん性のスリカラス状陰影となる。症状の悪化に伴い心陰影は次第に不鮮明となる。
心電図は右房・右室負荷を示す。
心エコーでは、1)右心系の著明な容量負荷および肺静脈狭窄を伴う場合は圧負荷、2)左房後方の異常共通肺静脈腔、3)異常肺静脈腔の体静脈または右房への流入の3点を認める。また、肺静脈狭窄を有する場合には心エコーで同定可能であり、肺うっ血に伴い肺高血圧の所見を認める。コントラストエコー法は、血行動態を示す上で有用で、1)末梢から注入したコントラストが右房→左房 →左室の順に流入する、2)異常肺静脈腔にはコントラストが入らない、の2つの所見が特徴である。
最近では、本症に対してカテーテル検査なして手術が行われることも多く手術成績も向上している。心臓カテーテルでは肺静脈の還流部位で酸素飽和度の上昇を認める。右房内で肺静脈血と体静脈血は混合されており、心内各部位の酸素飽和度はほぼ均一である。右室圧は心房間交通と肺静脈閉塞の程度により、ほぼ正常圧の例から左室圧を凌駕する例まで様々である。肺静脈閉塞の著明な例では、右室圧が左室圧以上になることもあるが、大きな動脈管があると減圧され等圧以上にはならない。
肺動脈造影により、肺静脈の異常還流部位を診断できるが、動脈管の大きな例では右-左短絡により造影剤が容易に下行大動脈に流れ、良好な造影が得られないことかある。本症に対する心臓カテーテル検査、特に肺動脈造影は侵襲が大きく、患児の状態を急速に悪化させることがあるため注意を要する
診断
心エコーあるいはCT、MRIにより、4本すべての肺静脈か直接右房または体静脈に還流することを確認し診断する。共通肺静脈閉鎖、三心房心、僧帽弁狭窄、肺静脈狭窄など肺うっ血をきたす先天性心疾患との鑑別が必要である。先天性心疾患以外でも,呼吸窮迫症候群(RDS)、新生児避延性肺高血圧症(PPHN)、胎便吸引症候群(MAS) なとの肺疾患との鑑別が必要である
治療
治療の基本は外科治療で、診断がつき次第、手術をおこなう
予後
外科治療を行わなかった場合、30%は3カ月以内に、80%は1歳までに死亡する。逆に20歳以上で発見される例もまれに存在する。
外科治療の成績は一般に向上しており、早期死亡は2-15%、10年生存率は90%である。約10%に術後肺静脈狭窄が生じ予後不良の要因となる。
術後遠隔期の洞機能不全、心房性不整脈、房室ブロックなどの不整脈に注意が必要である
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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