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じょうしつひんぱく (だぶるぴーだぶるしょうこうぐんによるものにかぎる。)
上室頻拍(WPW症候群によるものに限る。)Supraventricular tachycardia due to WPW syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類6
上室頻拍
細分類6
上室頻拍(WPW症候群によるものに限る。)

病気・治療解説

概要

WPW症候群はΔ波、PQ時間短縮、QRS幅の延長など特徴的な心電図を呈するが、上室頻拍中の心電図はほとんどの場合幅の狭いQRS波で、下記に述べるように房室結節を順伝導(心房から心室へ伝導する)、副伝導路を逆伝導(心室から心房へ逆伝導)することにより発生する。放置した場合、心房細動に伴う偽性心室頻拍による突然死の報告もあるが、WPW症候群の1%以下と言われる。その多くは10代以後である。頻拍発作がある場合には薬物治療またはカテーテル治療の適応となる。薬物治療が無効または副作用のために使用不能な場合または患者が薬物治療の継続を望まない場合には、高周波カテーテルアブレーションが行われる。高周波カテーテルアブレーションが成功した場合には、一般の正常人と予後は変わらない。

病因

心臓の発生時に房室弁(僧帽弁、三尖弁)付着部位は繊維化をおこし、房室結節以外の部位での伝導性は消失するが、この繊維化が何らかの原因で障害されると伝導性を有する心筋線維(副伝導路)が残るために発生すると考えられる。稀には出生後、心筋炎、心筋症などに伴い、伝導性のある心筋線維が新たに発生することもある。

疫学

学校心臓検診では0.1%に発見されるので、一般の頻度もこのくらいと考えられる。

臨床症状

動悸、失神をおこす。WPW症候群では心房細動を合併し、突然死する例も報告されている。

診断

【心電図】
WPW症候群は
1.Δ波
2.PQ時間短縮
3.QRS幅の延長
を認める。
頻拍中は房室結節を順伝導、副伝導路を逆伝導する(房室回帰頻拍)ため、
1.QRS幅が正常で、Δ波は認めない
2.QRSの直後に逆伝導のP波を認める
ことが特徴である。
安静時心電図でWPW症候群のΔ波を認めない例で、逆伝導のみの副伝導路による頻拍(房室回帰頻拍)を認めることがあり、これを潜在性WPW症候群と呼ぶ。
また、頻拍中に脚ブロックを合併することがある。この場合は、脚ブロックによる幅広いQRSの頻拍となる。
稀に副伝導路を順伝導、房室結節を逆伝導する上室頻拍を認めることがある。 この場合の頻拍の特徴は、
1.頻拍中にΔ波様の波形の幅広いQRS波形の頻拍を認める
2.多くの場合P波ははっきりしない
ので、心室頻拍との鑑別が困難である。

治療

頻拍の停止:房室結節を標的とする場合Caチャネルが「標的分子」となる.従ってCaチャネル遮断薬、β遮断薬あるいはATP急速静注を試みる。Caチャネル遮断薬は乳児期以前では、心停止を生じる可能性があり一般的に使用されない。ジゴキシンは、デルタ波がある顕性WPW症候群では副伝導路を介する房室伝導を促進するため禁忌との報告もある。
副伝導路を標的とする場合、副伝導路の不応期延長あるいは伝導抑制も頻拍抑制に有効で,Kチャネル遮断薬やNa チャネル遮断薬の効果が期待できる。
血行動態が破たんし、緊急性を要すると判断される場合、直流通電を行う。緊急的な発作停止の必要がないと判断される場合には、反射性に迷走神経緊張を生じさせる手技を試みる。小児では氷水で満たしたビニール袋を用いた顔面浸水が一般的である。年長児では息こらえや深呼吸などが有効なことがある。眼球圧迫は,網膜剥離の危険があるので行わない。迷走神経緊張が無効な場合には、ATP急速静注、Caチャネル遮断薬あるいはβ遮断剤の静脈内投与を試みる。
頻拍の予防:多くは、高周波カテーテルアブレーションで根治可能であるが、適応がないと考えられる場合、家族の希望がない場合には、必要に応じ発作予防のため薬物療法を行う必要がある。また乳児期初発の房室回帰頻拍患者の約70%は自然寛解し、5歳以降発症の房室回帰頻拍患者の自然寛解は20%にとどまり、発症年齢により自然寛解率が異なると報告されている。したがって発作予防には、不整脈機序、心機能のみならず自然歴を考慮し予防投与を計画する必要がある。

1) 中等度以上の心機能低下を示し、頻拍中の P 波が確認できないかQRS 直後に認められる場合:房室結節リエントリー性頻拍または房室回帰頻拍の可能性が高い。第一選択としてジゴキシンが選択される。ただし顕性WPW 症候群を除く。第二選択として表2に示した通りβ遮断作用のないNaチャネル遮断薬(intermediate)であるプロカインアミド、キニジン、アプリンジンが用いられる。

2)心機能低下は軽度もしくは正常な房室回帰頻拍では、房室結節伝導を抑制することを目的に、ジゴキシン、β遮断薬、ベラパミルが用いられる。第2選択薬としては房室回帰頻拍を考慮し副伝導路の伝導抑制を目的に中等度以上のK チャネル遮断作用のある薬剤(プロカインアミド 、キニジン、ジソピラミド 、シベンゾリン 、ソタロール)か、Na チャネル遮断薬・intermediate〜slow drugs(ピルジカイニド、フレカイニド、プロパフェノン、アプリンジン )を用いる。

3)高周波カテーテルアブレーション
推奨クラス:I
1.生命の危険がある心房細動発作または失神などの重篤な症状を有する場合
2.軽症状でもQOLの低下が著しい頻拍発作の既往がある場合
3.頻拍発作があり,薬物治療が無効または副作用のため使用不能または患者が薬物治療の継続を望まない場合

予後

放置した場合、心房細動に伴う偽性心室頻拍による突然死の報告もあるが、WPW症候群の1%以下と言われる。その多くは10代以後である。高周波カテーテルアブレーションが成功した場合には、一般の正常人と予後は変わらない。

参考文献

1. 長嶋正實他.小児不整脈改訂2版. 診断と治療社2011

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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