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はいどうみゃくべんじょうきょうさくしょう
肺動脈弁上狭窄症Supravalvular pulmonary stenosis

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類52
肺動脈狭窄症
細分類65
肺動脈弁上狭窄症

病気・治療解説

概要

肺動脈の弁上もしくは末梢にかけて狭窄。左右心室間の交通を伴わない。中心部肺動脈の狭窄であれば手術で拡大できるが、末梢側では手術施行困難である。

病因

遺伝性・孤発例ともあり、多因子遺伝と考えられる。Noonan症候群やWilliams症候群(染色体7q11欠失)に伴うことがある

疫学

諸家の報告では、肺動脈弁・弁上・弁下を併せて先天性心疾患の数%〜10%であるが、弁下狭窄は単独ではまれで,多くは心室中隔欠損 に合併する.単独でみられた場合には,合併していた心室中隔欠損の自然閉鎖の可能性がある。

臨床症状

右室収縮期圧により 1)軽症(50mmHg以下) 2)中等症(50mmHg~体血圧程度) 3)重症(体血圧以上)に分類される。軽症例では生涯を通じて無症状であり、中等症のものでも,年少の頃は無症状であり,検診などで偶然発見されることが多い。年長になるにつれ労作時の呼吸困難や易疲労性が出現してくる。重 症 乳 児 例 で は 多呼吸・ 哺乳困難・体重増加不良・頻脈・肝腫大等の心不全症状ある。年長児では簡単な労作での呼吸困難、易疲労性をきたし激しい運動では失神、突然死もあり得る

診断

(胸部エックス線所見)
主肺動脈がやや突出し,左右の肺動脈は細い。右房の拡大も約半分で認められ,心尖部は右室肥大のために丸みをもって突出する。一般に心拡大はないか,あっても軽度である。三尖弁閉鎖不全,心不全を合併すると右室右房の拡張によって心陰影拡大を生ずる。右室低形成型では心陰影はむしろ小さい。肺血管陰影は,通常正常であるが,心房レベルで右左短絡があれば減少する。

(心電図所見)
軽症例では正常範囲である。中等症以上では,右軸偏位,右室肥大,右房肥大を認める。右室収縮期圧が 系統動脈レベルに近づくにつれ,右側胸部誘導のQRSパタンは,rsR’,rR’,R,RS型で,T波は平坦 または陽性である。系統動脈圧を凌駕する例ではR,qRパタンをとり,ST下降,T波陰性のストレイン型となる。三尖弁閉鎖不全を伴うと水平面で時計方向 回転となる。右室狭小型では,右側胸部誘導のR波が低く,むしろ,左室肥大所見を呈し,純型肺動脈閉鎖と類似の心電図となる。

(心エコー図所見)
断層心エコー図では,肺動脈弁上の肥厚、狭窄を認める。ドプラ法では,三尖弁閉鎖不全の検出と逆流速度から右室圧を推定できる。また重症度は,心室中隔の右室側への偏位の程度によって半定量的に判定できる。

(心臓カテーテル検査)
狭窄の有無,右室圧,圧較差を評価し合併奇形の有無を診断し,手術前診断の目的でカテーテル検査を行う。右室圧、肺動脈内狭窄部近位側で収縮期圧力が狭窄が強い場合に拡張期圧も上昇するが脈圧は広くなる。肺動脈造影で形態を診断する。右室造影では右室内の肉柱構造が著明で壁は肥厚している。重症例では三尖弁逆流も認められる。

(三次元造影CT)
肺動脈弁上部の狭窄を認める。気管・食道等周囲臓器との位置関係を把握するのに極めて有用である

治療

治療の適応は右室圧で判断するが、肺動脈弁狭窄と同様である。軽症例では治療は不要で、生活運動の制限もない。中等症以上で学童期にある例では運動の部活動を禁止とする。
中心部肺動脈の狭窄であれば手術で拡大できるが、末梢側では手術施行困難である。そのためカテーテルによる治療の試みはあるが、単独例では効果が少ない場合が多い。ただ術後の末梢性肺動脈狭窄には有効例があり試みる価値がある

予後

まれに乳児期早期に心不全で死亡する症例はあるが、Williams症候群に伴うものは自然に軽快する症例もある

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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