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だいどうみゃくべんじょうきょうさくしょう
大動脈弁上狭窄症Supravalvular aortic stenosis

小児慢性疾患分類

疾患群4
慢性心疾患
大分類56
大動脈狭窄症
細分類72
大動脈弁上狭窄症

病気・治療解説

概要

大動脈弁上、Valsalva洞より遠位が限局性に狭窄した病態。上行大動脈の低形成を伴う場合がある。Williams症候群に合併することも、家族性の場合もある。狭窄前後の圧較差が50mmHg以上の症例は手術適応となる。

病因

大動脈弁上のValsalva洞より遠位に限局性に狭窄が生じる病型(砂時計型)が多い(約75%)が、上行大動脈が細い低形成型もある。Williams症候群に合併することが多く、家族性の場合もある。Williams症候群では染色体7q11.23領域に座位するエラスチン遺伝子の欠失が認められ、非Williams症候群の家族性の症例ではエラスチン遺伝子の変異が認められる例があり、エラスチンの異常が病因と考えられる。エラスチンは、大動脈の弾性線維を構成するタンパクである

疫学

大動脈弁狭窄として先天性心疾患の約5%を占める。欧米では約10%を占めるとする報告もあり、人種差(白人に多い)が認められる。大動脈弁上狭窄は、Williams症候群に合併することが多い。家族性の場合もある

臨床症状

聴診上の収縮期雑音。自覚症状はなく発育も正常のことが多いが、重症例では、易疲労感、労作時呼吸困難、狭心痛、失神

診断

【胸部エックス線】
心尖部の円形突出(左室肥大)を認めることがある。

【心電図】
左室肥大(左室圧負荷)、左側胸部誘導におけるST低下や陰性T波(重度狭窄の場合)

【心エコー図】
大動脈弁上部の狭窄、狭窄部の乱流(モザイク血流)、左心室壁肥厚

【心臓カテーテル・造影所見】
引き抜き圧測定で狭窄部前後で圧較差、左室造影または上行大動脈造影で狭窄(砂時計型ないし上行大動脈低形成)
上記検査所見が認められる。確定診断には、いずれかにより大動脈弁上部の狭窄を証明する

治療

砂時計型では、狭窄前後の圧較差が50mmHg以上の症例は手術適応となる。手術は、狭窄部より上から大動脈を冠状動脈洞にまで切り込んでパッチ拡大する(Meyer法、Dotty法)。カテーテルによる経皮的バルーン拡大術の有効率は低い。低形成型の手術はより困難で、低形成の及ぶ範囲を広範囲に拡大する必要がある。術後も狭窄病変の残存について、生涯的に内科的管理を行い、術後遠隔期の再狭窄に対しては、必要に応じてカテーテル治療ないし再手術を検討する

予後

乳児期から有症状の場合、予後不良で、無治療では早期に死亡する。大動脈弁上狭窄の自然歴は、成長とともに進行する場合が多く、乳児期に無症状でも経時的な観察し、適切な時期に手術適応を検討する。手術により予後は改善するが、術後の残存病変および再狭窄について、生涯的な管理が必要。特に低形成型で術後残存狭窄が高度の場合、予後不良

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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