だえきせんがん唾液腺癌Salivery grand carcinoma
小児慢性疾患分類
- 疾患群1
- 悪性新生物群
- 大分類5
- 固形腫瘍(中枢神経系腫瘍を除く。)
- 細分類62
- 唾液腺癌
病気・治療解説
概要
大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)に発生する癌腫をさす。
疫学
唾液腺腫瘍は全臓器腫瘍の約1%、全頭頸部腫瘍の約3%を占める。全唾液腺腫瘍症例の約80%は耳下腺に発生し、その内約20%は悪性とされている。小児がん学会全数把握事業の集計結果によると、2009年では全小児がん2095例中0例、2010年では2065例中1例、2011年では1802例中1例と極めて稀である。
症状
頸部腫脹や疼痛、顔面神経麻痺など。
診断
手術検体に対する病理学検索により診断される。低悪性度や多彩な組織所見を呈する組織型では、生検検体のみでの確定診断が困難な場合がある。
唾液腺癌は様々な組織型を含む概念で、腺房細胞癌、粘表皮癌、腺様嚢胞癌、多型低悪性度腺癌、上皮筋上皮癌、明細胞癌NOS、基底細胞腺癌、脂腺癌、嚢胞腺癌、粘液腺癌、オンコサイト癌、唾液腺導管癌、腺癌NOS、筋上皮癌、多形腺腫由来癌、癌肉腫、扁平上皮癌、リンパ上皮癌、唾液腺芽腫などがあげられる。また、近年腫瘍特異的な融合遺伝子が粘表皮癌(CRTC1[MECT1]-MAML2)や腺様嚢胞癌(MYB-NFIB)、乳腺相似分泌癌(ETV6-NTRK3)、硝子化明細胞癌(EWSR1-ATF1)で同定されており、鑑別の一助になると考えられている。
治療
主たる治療法は外科的切除である。また、悪性度の高い組織型や断端陽性例および断端が腫瘍と近い場合などには放射線治療を併用する。化学療法に関しては、手術による根治が望めない症例や再発リスクの高い症例に対して補助的に試みられてきたが、現在のところその有用性は確立されていない。近年、唾液腺導管癌などで、Her2やEGFR、アンドロゲンレセプターの高発現を認める症例に対し、分子標的治療がなされる場合もある。
予後
組織型により、予後にも差が認められる。大きく低悪性度群、中悪性度群、高悪性度群にわけられ、各々の5年生存率は>85%、50-85%、<50%である。
低悪性度群では、腺房細胞癌、低悪性度粘表皮癌、多型低悪性度腺癌、明細胞癌NOS、基底細胞腺癌、嚢胞腺癌、低悪性度篩状嚢胞腺癌、粘液腺癌、乳腺相似分泌癌、腺癌NOS(低悪性度)、多型腺腫由来癌(非浸潤型・微小浸潤型)、唾液腺芽腫が、中悪性度群では、中悪性度粘表皮癌、腺様嚢胞癌(篩状型・管状型)、上皮筋上皮癌、脂腺癌・脂腺リンパ腺癌、リンパ上皮癌が、また、高悪性度群では、高悪性度粘表皮癌、腺様嚢胞癌(充実型)、オンコサイト癌、唾液腺導管癌、腺癌NOS(高悪性度)、筋上皮癌、多形腺腫由来癌(浸潤型)、癌肉腫、扁平上皮癌、小細胞癌、大細胞癌が含まれる。
参考文献
頭頸部癌取扱い規約 (第5版) 金原出版 2012年
外科病理学(第4版) 向井清、真鍋俊明、深山正久 編集 文光堂 2006年
三浦雅彦. 唾液腺腫瘍の放射線治療. 口腔腫瘍. 23(3): 69-72, 2011
北尾恭子, 本間明宏, 他. 顎下腺悪性腫瘍1次症例の検討. 日耳鼻. 114: 126-132, 2011
森智昭, 嶋根俊和, 他. 唾液腺導管癌4例でのHER2, EGFR, ARの発現の検討. 口咽科. 25(2): 207-211, 2012
長尾俊孝. 唾液腺癌の病理診断. 頭頸部癌. 39(4): 397-401, 2013
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