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せんびぶきけいしゅ
仙尾部奇形腫sacrococcygeal teratoma

小児慢性疾患分類

疾患群11
神経・筋疾患
大分類2
仙尾部奇形腫
細分類4
仙尾部奇形腫

病気・治療解説

概要

仙骨の先端より発生する奇形腫で、臀部より外方へ突出または骨盤腔内・腹腔内へ進展する。充実性から嚢胞性のものまで様々な形態をとる。

疫学

40,000出生に1例の割合で発生するといわれている。男女比はおおよそ1:3で女児に多い。仙尾部奇形腫は新生児期に診断される奇形腫の中で最も頻度が高く、出生時に診断されるもののほとんどは成熟奇形腫・未熟奇形腫である。しかし、1歳以降は悪性奇形腫である卵黄嚢腫瘍が多く、75%以上と報告されている。この疾患の分類としては古くからAltman分類が用いられおり、TypeIは腫瘍の大部分が骨盤外成分であるもの、TypeIIは骨盤腔内への腫瘍の進展をともなうものの骨盤外成分の方が大きいもの、TypeIIIは骨盤外にも進展するが骨盤腔内・腹腔内成分の方が大きいもの、TypeIVは骨盤腔内・腹腔内成分のみで骨盤外への発育を認めないものと分類されている。

病因

尾骨の先端に位置する多分化能を有する細胞(Hensen’s node)を起源とし、発生すると考えられている。3胚葉由来の成分を含むため、骨・歯牙・毛髪・脂肪・神経組織・気道組織・消化管上皮・皮膚などあらゆる組織を含み得る。組織学的な分類としては構成成分がすべて成熟分化しているものを成熟奇形腫、未熟な成分を含むものを未熟奇形腫、悪性成分を含むものを卵黄嚢腫瘍と区別されている。

症状

臀部から外方または骨盤腔内へ進展する腫瘤を認める。腫瘤により尿管・膀胱、直腸が圧排され尿閉や便秘を来したり、下肢の運動障害を来すことがある。胎児期に発見された症例においては、血流が豊富な充実性腫瘤である場合、高拍出性心不全から胎児水腫となり、子宮内胎児死亡をひきおこしたり、緊急帝王切開により早期の娩出が必要となることがある。また、悪性奇形腫の場合は排便・排尿障害のほかに、鼠径リンパ節腫大や脊柱管内進展や多臓器への転移を認めることもある。

治療

成熟奇形腫や未熟奇形腫においては、外科的切除が行われる。この際、尾骨も含めて腫瘍を切除する必要がある。Altman I型の症例では臀部からのアプローチで切除を行う症例が多いが、腹腔内成分の大きな症例においては開腹手術も併用する。また、充実性の巨大な腫瘤においては出血のリスクが高く、まず栄養血管である正中仙骨動脈を結紮することが有用である。卵黄嚢腫瘍においてはBEP療法などの化学療法を先行させ、2期的に外科的切除を行うこともある。

予後

本邦の胎児期に発見された仙尾部奇形腫の症例の検討からは、胎児水腫や高拍出性心不全をきたし、周産期に12%の症例が死亡していた。一方、乳児期以降の死亡症例は全体の2%と遠隔期の死亡は比較的まれであると考えられる。ただ、新生児期・乳児期に摘出された奇形腫のうち8%は再発したとの報告もあり、十分なフォローアップが必要である。また、悪性腫瘍としての仙尾部奇形腫については、4年生存率が約90%と報告されている。本症では、切除術後も排便障害・排尿障害・下肢の運動障害が残る症例が15%程度報告されているため、これらの障害についても十分なケアが必要である。

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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