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きゅうそくしんこうせいしきゅうたいじんえん (たはつけっかんえんせいにくげしゅしょうによるものにかぎる。)
急速進行性糸球体腎炎(多発血管炎性肉芽腫症によるものに限る。)rapidly progressive glomerulonephritis due to Granulomatosis with polyangiitis (GPA)

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病気・治療解説

概念

急速進行性糸球体腎炎(rapidly progressive glomerulonephritis:RPGN)とは,日本腎臓学会が提唱した診断基準 (1)では,「数週から数か月の経過で急速に腎不全が進行し,血尿,蛋白尿,円柱尿などを認める糸球体腎炎」と定義される。WHOでは「急性あるいは潜在性に発症する,肉眼的血尿,蛋白尿,貧血,急速に進行する腎不全症候群」と定義されている。これらの基準を満たせば,原因の糸球体腎炎の種類を問わずRPGNとされる。すなわち,RPGNとは状態を表す診断名であり,固有の疾患名ではない。
多発血管炎性肉芽腫症は,近年Wegener肉芽腫よりその名称が変更となったもので,1939年にドイツの病理学者Wegenerが提唱した,①耳,眼,鼻咽頭を含む上気道および肺に認められる壊死性肉芽腫性血管炎,②全身諸臓器の小・中型血管の壊死性血管炎,③壊死性半月体形成性糸球体腎炎を3主徴とする疾患である。

病因・病態

抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody: ANCA)の中でも抗好中球細胞質の一次顆粒中のセリンプロテアーゼであるproteinase-3 (PR3)に対応するcytoplasmic(C)-ANCAが70-80%と高率に陽性を示す(2)。腎炎の所見として変形赤血球などを伴う糸球体性の血尿を中心に軽度~中等度のタンパク尿,顆粒球円柱や硝子円柱などの各種円柱を尿所見異常として認め,肉芽腫や壊死性半月体形成性糸球体腎炎,壊死性血管炎により急速に進行する腎機能障害を呈する。
肉芽腫性腎炎の原因は薬剤性から感染性,血管炎,サルコイドーシスなどと多岐にわたり,腎炎のうち0.5%から1.37%に発症すると報告されている(表1)(3)。その多くが肉芽腫に伴う尿細管間質性腎炎を呈し,糸球体腎炎を伴うことはまれである。
黄色ブドウ球菌などの感染を契機に活性化した単核球がIL-1やTNFαなどの炎症性サイトカインを放出し,その結果接着因子やPR3などが好中球の細胞表面に発現し,血管壁に接着する。また,ブドウ球菌を摂取した食細胞の脱顆粒によりPR3が放出される。更に,ブドウ球菌のスーパー抗原の侵入が単核球の活性化とPR3特異B細胞の活性化を惹起し,ANCAが産生される。その後にANCAが内皮細胞に接着した好中球の細胞膜を刺激し,タンパク分解酵素の放出や活性酸素の産生により,血管障害を惹起する。また,ブドウ球菌のスーパー抗原はT細胞と他の抗原提示細胞を反応させ,自家感作T細胞の活性化を惹起し,サイトカイン産生,肉芽腫形成へと導く(4)。

臨床症状

全身症状として,発熱,関節痛,全身倦怠感,食欲不振,体重減少を呈するが,臨床分類として,ELK臨床分類基準(E:ear,nose and throat,L:lung,K:kidney)が用いられている(5)。E症状のうち鼻症状として鼻出血,膿性鼻汁,鼻中隔穿孔,壊疽性鼻炎や鞍鼻を,眼症状として眼痛,視力低下,結膜炎,眼球突出など,耳症状として中耳炎,内耳障害,難聴などを認め,初発症状の約90%に出現する,L症状は約80%に認め,咳嗽,呼吸困難,喀血,胸痛を主症状とし,胸部X線上小結節や浸潤影,空洞像を認める。K病変として臨床所見では急速進行性腎炎様に発症し,尿所見では血尿はほぼ必発で肉眼的血尿を伴うこともあり,種々の円柱,タンパク尿も認め,時にネフローゼ症候群を呈することもある。腎生検所見では蛍光抗体法では免疫グロブリンや補体の有意沈着を伴わないpauci-immune型の腎炎を呈し,光顕所見では巣状分節状もしくは壊死性半月体形成性糸球体腎炎の所見を認め,係蹄壊死・破壊,血栓やフィブリン析出などを認め,細動脈や小葉間動脈にも壊死性血管炎が生じる。激しい糸球体腎炎に伴い肉芽腫性糸球体腎炎を伴うことがあり,肉芽腫は糸球体血管極から始まり,虚脱糸球体を覆うように,ボウマン嚢を取り囲み形成され,ボウマン嚢基底膜は部分的,全周性に消失する。また間質にも肉芽腫形成を認め,間質性腎炎の所見も認める(6)。

表1 肉芽腫性腎炎の原因

診断・鑑別診断

急速進行性性糸球体腎炎の診断については,2002年に厚生労働省の分科会より発表された診療指針が頻用されている(表2)。この診療指針は2010年に改訂され,早期発見のための診断指針が改訂されている(表3)。
多発血管炎性肉芽腫症の診断は表3による。

表2 急速進行性腎炎症候群確定診断指針(1)

表3 急速進行性腎炎症候群早期発見のための診断指針 (1, 7, 8)

表4 GPA(Wegener肉芽腫)診断基準(厚生省1998年)

上記のELK症状や生検における肉芽腫性病変や血管炎,PR3-ANCAの陽性が診断にかかわる重要な因子である(10).
肉芽腫性腎炎を起こす疾患は数多く認められるが,その中で血管炎を伴い糸球体腎炎を起こす疾患との鑑別ではアレルギー性肉芽腫性血管炎(Churg-Strauss症候群)が最も重要である.アレルギー性肉芽腫性血管炎はアレルギー性鼻炎(70%),気管支瑞息(98%)を前駆症状に,好酸球増多期を経て全身性血管炎を発症し,肉芽腫形成を伴うこともある.40-80%の患者にANCA陽性となるが,GPAと違いその多くがmyeloperoxidase(MPO)-ANCAである.腎病変はGPAと比較すると頻度は少ないが,同様にpauci-immune型の壊死性半月体形成性糸球体腎炎や巣状分節状糸球体腎炎を呈する(1, 7, 11, 12).

治療・予後

無治療では90%が2年以内に死亡するとの報告があり,できるだけ早期に診断し強力な免疫抑制療法にて寛解導入する必要がある。我が国では,1997年に厚生労働省より成人患者を対象とした治療プロトコールが示されており,寛解導入療法と維持療法に分け,更に寛解導入療法は全身型GPAと限局型GPAで治療法を分けている。全身型ではシクロホスファミド(CY)とプレドニゾロン(PSL)の経口投与を,限局型ではPSL,CY,スルファメトキサゾール(ST)合剤の経口投与を8-12週行い寛解導入する。副作用でCYが使用できない場合アザチオプリン(AZ)同量か,メトトレキサート(MTX)を使用する。
維持療法としてはPSLもしくはCYを12-24カ月行い,再発時はCY(AZ),MTX,PSLを寛解導入期の投与量に戻すとしている(8, 13)。また,近年ステロイド抵抗性や急性呼吸不全,脳出血などを呈する最重症型にはメチルプレドニゾロンパルス療法やCYパルス療法が推奨されている(13)。
一方、小児において確立された治療指針はないが、使用する薬剤の考え方は同様で良い。疾患活動性が高ければ、パルス療法を含むステロイド薬とIVCY療法を含むCYを併用し寛解導入を行う。寛解導入後はアザチオプリン,ミゾリビン、ミコフェノール酸モフェチル、メソトレキセートなどと少量の経口ステロイド薬で寛解維持療法を継続する。重症例や寛解導入困難な場合は血漿交換療法を併用する。また、従来の治療抵抗性であればリツキシマブも選択肢となる。高齢者では、感染症が死因の半分を占め、特に呼吸器系の感染症が予後に影響する。そのため、高齢者では過度の免疫抑制には慎重であるべきである。しかし、小児においては感染で死亡することは稀であり、感染症を恐れ積極的治療を控えることがあってはならない。

参考文献

1) 急速進行性糸球体腎炎診療指針作成合同委員会.急速進行性腎炎症候群の診療指針.日腎会誌 44:55-82, 2002
2) Kallenberg CG, Heeringa P, Stegeman CA. Mechanisms of Disease: pathogenesis and treatment of ANCA-associated vasculitides. Nat Clin Pract Rheumatol 2:661-70, 2006
3) Javaud N, Belenfant X, Stirnemann J, et al. Renal granulomatoses: a retrospective study of 40 cases and review of the literature. Medicine (Baltimore) 86:170-180, 2007
4) Kallenberg CG. Pathogenesis of PR3-ANCA associated vasculitis. J Autoimmun 30:29-36, 2008
5) Leavitt RY, Fauci AS, Bloch DA, et al. The American College of Rheumatology 1990 criteria for the classification of Wegener’s granulomatosis. Arthritis Rheum 33:1101-1107, 1990
6) Yoshikawa Y, Watanabe T. Granulomatous glomerulonephritis in Wegener’s granulomatosis. Virchows Arch A Pathol Anat Histopathol 402:361-372, 1984
7) 厚生労働省特定疾患「進行性腎障害」急速進行性腎炎分科会. 急速進行性腎炎症候群の診療指針 第2版. 厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班報告. 日腎会誌53:509-555, 2011
8) 日本腎臓学会 編. CKD診療ガイドライン2013. 東京医学社, 東京, p140-150, 2013
9) Uemura O, Nagai T, Ishikura K, et al. Creatinine-based equation to estimate the glomerular filtration rate in Japanese children and adolescents with chronic kidney disease. Clin Exp Nephrol.in press
10) Ozaki S:ANCA-associated vasculitis: diagnostic and therapeutic strategy, Allergol lnt 56: 87-96, 2007
11) 廣村桂樹,野島美久:アレルギー性肉芽腫性血管炎.腎と透析68:67-72, 2009
12) Sinico RA Bottero P: Churg-Strauss angiitis. Best Pract Res Clin Rheumatol23:355-366, 2009.
13) 吉田正治.PN, Wegener肉芽腫症.日内会誌 100:1244-1253, 2010

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。