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たのうほうせいらんそうしょうこうぐん
多嚢胞性卵巣症候群Polycystic ovary syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群5
内分泌疾患
大分類40
多嚢胞性卵巣症候群
細分類87
多嚢胞性卵巣症候群

病気・治療解説

概要

1935年に、両側卵巣の多嚢胞性腫大と肥満・男性化徴候を伴う月経異常を主徴とするStein-Leventhal症候群が報告され、以後、成人においては排卵障害を伴う症候群として一般化したが、必ずしも特徴的徴候を有さないPCOS症例が増加し、基準が曖昧となっていた。海外では1990年にNIHが排卵障害と高アンドロゲン血症の二つを必ず満たすという診断基準を作成し、2003年にESHRE/ASRMの、いわゆるRotterdam Criteriaが策定され、排卵障害、高アンドロゲン血症、卵巣のPCO所見のうち二つを満たすものとし、これが世界的には最も多く使用されている。2009年にはAES(Androgen Excess Society)が高アンドロゲン血症を認めないPCOSの存在に疑問を呈し、未だ議論は継続している。
一方本邦では、欧米との表現型が異なることが指摘されており、特に肥満を伴う例が少ないこと、東アジア系では高アンドロゲン血症でも多毛を来さない例が多いことから、欧米の定義をそのまま当てはめることには無理があった。そこで日本産婦人科学会は、1993年に生化学データを盛り込み、排卵障害、高LH、卵巣のPCO所見の3つを必ず満たすという基準を設定した。しかし、LH測定系の問題などが明らかとなって、2007年にはこれを改定し、月経異常(排卵障害)、高LHまたは高アンドロゲン、卵巣のPCO所見の3つを必ず満たす、という基準を設定した。

疫学

成人生殖年齢女性の6〜8%が多嚢胞性卵巣を有するとされているが、小児思春期での有病率は不明。日本では欧米と異なり、肥満に伴う多嚢胞性卵巣症候群の頻度は少ない

病因

基本的な病因は、卵巣内の高アンドロゲン血症である。高アンドロゲン血症が、卵巣原発であるか、下垂体LH分泌増加が原発性の問題であるかは議論がある。卵巣のLHに対する感受性亢進が、卵巣内のステロイド合成に異常を来すと考えられているが、Fibrillin3,POMCなど特定の遺伝子多型の関与も報告されており、遺伝学的背景の存在が示されている他、胎生期の栄養状態と胎児発育との関連も示されている。
卵巣内高アンドロゲンは、卵巣内での主席卵胞の成熟を抑制し俠膜細胞と顆粒膜細胞の早期黄体化を促進して、多くの小卵胞を産生する。このことにより,卵巣は多嚢胞性となり、月経周期は障害される。

症状

月経異常:月経不順、無排卵性月経

男性化徴候:低音声,陰核肥大,喉頭隆起の突出,骨格筋の発達などをきたす。

皮膚症状:多毛(Ferriman-Gallway の多毛スコア参照)、座瘡、男性型脱毛(頭頂部・後頭部)、黒色棘細胞腫(インスリン抵抗性の徴候、首、腋下、鼠径部にみられる黒色びまん性の色素沈着と粗な皮膚所見)

肥満:日本人では伴わないことが多い

治療

無月経等月経異常、不妊に対してクロミフェン、HCG-FSH療法、腹腔鏡下卵巣多孔術、生殖補助医療など。
インスリン抵抗性改善の目的で肥満の改善、メトフォルミン。
多毛に対し、低用量ピル、スピロノラクトンなど。薬物療法は効果出現までに時間がかかる

予後

肥満に因るところが大きい場合、減量のみで改善する。挙児のためには、生殖補助医療やホルモン療法が必要となることもある

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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