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ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症Phosphoenolpyruvate carboxykinase deficiency

小児慢性疾患分類

疾患群8
先天性代謝異常
大分類5
糖質代謝異常症
細分類64
ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症

病気・治療解説

概要

ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)は、オキザロ酢酸をホスホエノールピルビン酸へと変換する酵素であり、ミトコンドリアPEPCK と細胞質PEPCKの2つのアイソザイムが存在する。PEPCK欠損症は、常染色体劣性遺伝形式をとり、アミノ酸や乳酸から産生されたオキザロ酢酸の糖新生系における利用が障害されているため、飢餓時に低血糖、高乳酸血症を来し、多臓器の障害がみられる。

疫学

非常にまれな疾患であり、これまでの報告例は10例以下である1)。

病因

ミトコンドリアPEPCK欠損症は染色体14q11.2に座位するPCK2遺伝子変異に、一方、細胞質PEPCK欠損症は染色体20q13.31に座位するPCK1遺伝子変異に起因する。PEPCK1はアミノ酸からの糖新生系において、PEPCK2は乳酸からの糖新生系において律速酵素の役割を行っていると考えられている2)ため、これらの障害によって低血糖や高乳酸血症が誘発される。

症状

PEPCK欠損症患者は、新生児期または乳児期早期に、成長障害、筋緊張低下、発達遅延、痙攣、傾眠、肝腫大などを呈して発症する3)。肝障害、尿細管性アシドーシス、心筋症などの多臓器障害が進行する。

診断

1) 一般検査
急性増悪時の検査で、低血糖、代謝性アシドーシス、血中乳酸・ピルビン酸上昇、血中アラニン上昇を認める。ケトン体上昇はみられない。肝機能障害、血液凝固異常、コレステロールや中性脂肪の上昇も報告されている3)。

2) 確定診断
酵素活性は、生検肝を用い、細胞質とミトコンドリア分画に分離の上で測定すべきである。白血球や線維芽細胞を用いても、ミトコンドリアPEPCKのみの活性測定は可能である。患者においては、PEPCK遺伝子変異はいまだ同定されていない3)。

治療

1) 急性期
充分な量のブドウ糖を輸液にて投与し、アシドーシスを炭酸水素ナトリウムで補正する。輸液製剤は乳酸を含まないものを選択する。

2) 慢性期
有効な治療法は報告されていない。長時間の飢餓を避け、感染症などで経口摂取困難な時や嘔吐のある時には、積極的にブドウ糖の輸液を行う。

予後

PEPCK欠損症患者では、難治性の低血糖や神経病変、肝不全などの進行により、乳幼児期に死亡することが多い3)。

成人期以降

これまでの報告例は乳幼児期に死亡しており、成人期までの生存は困難と思われる。

参考文献

1) 伊藤道徳. ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ欠損症. 日本臨床2012;別冊 No.19; 443-445
2) Watford M, et al. The unique role of the kidney in gluconeogenesis in the chicken. The significance of a cytosolic form of phosphoenolpyruvate carboxykinase. J Biol Chem 1981;256:10023-10027
3) De Meirleir L, et al. Disorders of pyruvate metabolism and the tricarboxylic acid cycle. In: Fernandes J, et al (eds). Inborn Metabolic Diseases. Springer, Heidelberg, 2006;161-174

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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