いんとうきょうさく咽頭狭窄pharyngeal stenosis
小児慢性疾患分類
- 疾患群3
- 慢性呼吸器疾患
- 大分類1
- 気道狭窄
- 細分類1
- 気道狭窄(咽頭狭窄、喉頭狭窄、気管狭窄、気管軟化症、気管支狭窄症・軟化症)
病気・治療解説
概念
咽頭狭窄は、咽頭腔が同年齢の正常児に比べて明らかに狭く、かつそれに起因する症状を有する状態をいう。狭窄には固定性のものと変動性のものがある。
病因
咽頭腔を構成する組織の形成異常や形態・位置異常による。
先天性としては頭蓋顔面奇形、前頭蓋底の形成不全、下顎形成不全、代謝異常症など、後天性としては神経筋疾患、舌根沈下、腫瘤、高度肥満などがある。
疫学
正確な症例数や発生頻度は明らかではない。
臨床症状
以下のような症状を呈する。症状の程度は、狭窄の程度や部位、合併疾患の有無などによって異なる。
・呼吸困難:狭窄が高度の場合にはチアノーゼや無呼吸を生じる。特に口呼吸を獲得するまでの乳児では呼吸困難が出現しやすく、気管挿管などによる気道確保が必要になることがある。
・喘鳴:主として吸気性である。喘鳴の程度は、狭窄の程度、安静状態、体位に影響される。
・繰り返す気道感染症:努力呼吸によって口腔内のものが気管へ吸引されて気道感染を起こすことがある。反復あるいは遷延しやすい。
・胃食道逆流:努力呼吸によって空気の嚥下が増加するため、胃食道逆流が起こりやすくなる。
診断
診断には経鼻内視鏡検査が最も有用である。
内視鏡検査:狭窄の部位、程度、範囲、呼吸性変動を評価する。検査は喘鳴が強くなる条件下(体位や安静状態など)で行うよう努める。症状の主因が咽頭狭窄であることを確定するためには、喉頭や下気道に異常がないことを確認する必要がある。
頸部単純X線検査:咽頭腔の大きさを評価するための簡易検査である。乳幼児では呼吸、体動、体位の影響を受けやすいため、この所見だけで咽頭狭窄と診断することはできない。
CT、MRI:咽頭狭窄の部位、程度、範囲の評価のほかに、周辺臓器の情報を得るのに有用である。狭窄の呼吸性変動は評価できない。
治療
呼吸状態によって異なるが、可能であればまず保存的治療(薬物療法、経管栄養、酸素吸入など)を行う。
迅速な呼吸管理が必要であれば、気道確保(エアウェイ、挿管、気管切開)を行う。
保存的治療に抵抗性で、適応があれば外科的治療(後鼻孔狭窄、咽頭の腫瘤、アデノイド肥大、口蓋扁桃肥大など)を行う。
・対症療法:体位の工夫を試みる。一般に仰臥位より側臥位あるいは監視下の腹臥位が奏効しやすい。経口摂取が困難であれば経管栄養を行う。口腔内分泌物の貯留が多いときには口腔内持続吸引を行うことがある。入院中であればパルスオキシメータを装着し、必要に応じて酸素吸入を行う。
・薬物療法:気道感染症の合併は気道狭窄の増悪につながるため、感染兆候がみられたら早期に治療を開始する。症状が軽度であれば去痰薬、細菌感染が示唆されれば抗菌薬、下気道狭窄症状があれば気管支拡張薬を投与する。
・経鼻エアウェイ:経鼻的に咽頭狭窄部を超える長さのチューブを留置する。ただし、頭蓋顔面奇形に伴う狭窄の場合には、骨性に狭窄しているため、狭窄部の削開術などの外科的治療が必要になる。チューブ留置によって感染、出血、肉芽などの合併症が生じることがあるため、長期間の留置では定期的な観察が必要である。
・非侵襲的陽圧呼吸(NPPV):顔面や鼻にマスクを装着し、陽圧をかけて気道や換気を確保する方法である。マスクによる外傷やマスクからの空気漏れに注意する。
・外科的治療:経口あるいは経鼻的な気道確保が困難な場合や長期挿管では気管切開を行う。狭窄の原因がアデノイド肥大、口蓋扁桃肥大、咽頭腔の腫瘤などでは摘出術を行う。下顎低形成では下顎の延長術を行うことがある。舌肥大では舌縮小術を行う。
小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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