どうみゃくかんかいぞんしょう動脈管開存症Patent ductus arteriosus
小児慢性疾患分類
- 疾患群4
- 慢性心疾患
- 大分類42
- 動脈管開存症
- 細分類51
- 動脈管開存症
病気・治療解説
概要
胎児期に開存している動脈管(大動脈と肺動脈間に存在する血管)が、出生後も自然閉鎖せず開存状態を維持した疾患。大動脈から肺動脈への短絡が生じる。短絡量は管の大きさにより、大きいと左心系の容量負荷になる。細い動脈管開存が心不全を起こすことはないが、細菌性心内膜炎を合併する危険はある。太い動脈管開存は肺高血圧を合併し、乳児期に心不全を生じる。また肺炎、気管支炎なども多い。4-5歳以後には次第にEisenmenger化することがある。治療後の経過は良好である。閉鎖栓(Amplatzer Duct Occluder)を用いたカテーテル治療が主流である。
病因
胎内で動脈管が開存しているのは、胎児循環の低い酸素分圧と高いプロスタグランジン濃度による。出生により肺呼吸が始まると成熟児の動脈管は動脈血酸素分圧の上昇と血中プロスタグランジン濃度の低下により中膜の平滑筋が収縮し、生後10-15時間で機能的に閉鎖する。収縮した動脈管は内膜と内膜下組織の変性、線維化により生後2-3週間で器質的に閉鎖する。未熟児では動脈管組織とプロスタグランジン代謝の未熟性から閉鎖が遅延する。成熟児は未熟児に比べて動脈管の酸素に対する反応性が高く、反対に未熟児ではプロスタグランジンに対する反応性が高い。
動脈管の収縮が不十分な理由としては先天性風疹症候群では風疹ウィルスであり、チアノーゼ性心疾患では低酸素血症であろうが、単独の動脈管開存の場合には明らかではない
疫学
妊娠初期の風疹ウィルス感染は高率に動脈管開存をもたらす。(先天性風疹症候群)。単独の動脈管開存症の頻度は出生2500-5000人に1人(0.02-0.04%)であり、性差は2:1で女性に多い。また家族内集積の例もある
臨床症状
最も特徴的な所見は連続性心雑音である。典型例ではピークがⅡ音に一致した漸増・漸減型で、高調・低調両成分に富む荒々しい雑音(machinery murmur)が左第2肋間を中心に聴取される。しかし、心雑音の性状は肺血管抵抗や心不全の存在によって影響される。出生直の肺血管抵抗が高い時期には心雑音を聴取しないことがある。肺血管抵抗が低下するにつれて、収縮期雑音が聴かれ、次第に拡張期におよび、さらに典型的な連続性雑音へと変化する。心不全が高度場合や肺高血圧がすすむと、肺動脈の拡張期の血流が減少して心雑音は収縮期にのみ聴かれ、まれには心雑音が聴取されなくなることもある。
中等度から大量の左右短絡を有する動脈管開存症では、易疲労感や息切れなどの心不全症状が認められることがある。乳児では多呼吸、頻脈、多汗、哺乳不良、体重増加不良がみられる。左室の容量負荷が心尖躍動(hyperactive precordium)として観察される。四肢の脈は反跳脈(bounding pulse)として触れ、痩せた患者では腋窩や鼠径部で拍動がみえることもある。Ⅰ音とⅡ音は亢進し、心尖部にⅢ音と拡張期ランブルが聴かれる
診断
治療
心不全がある場合、動脈管が閉鎖するまでの間、利尿薬と血管拡張薬を中心にした内科治療を行う。動脈管の閉鎖治療には①開胸手術、②カテーテル治療、③胸腔鏡下手術がある。①開胸手術は結紮、切離、あるいはクリップによる動脈管の遮断である。一般に手術成績は良好である。②カテーテル治療では最小内径3mm以下の動脈管開存はカテーテルとコイルで閉鎖できる。3-5mmの中等大の場合も複数のコイルで閉鎖可能である。最近、施設によっては2mm以上の動脈管開存に対してはカテーテルと閉鎖栓(Amplatzer Duct Occluder)を用いて治療することもある。③胸腔鏡下手術は内視鏡をガイドに動脈管をクリップで遮断する治療法である。閉鎖栓(Amplatzer Duct Occluder)を用いた治療が主流になってきている
予後
細い動脈管開存が心不全を起こすことはないが、細菌性心内膜炎を合併する危険はある。太い動脈管開存は肺高血圧を合併し、乳児期に心不全を生じる。また肺炎、気管支炎なども多い。4-5歳以後には次第にEisenmenger化することがある。治療後の経過は良好である。治療せずに成人に達した場合には心不全や不整脈を生じる例が増える。特に胸部X線写真で心拡大が進行する場合には予後不良である。成人では30歳以上で動脈管部に石灰化を生じることがある。動脈管組織が動脈瘤となることがある
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