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そのた、にょうろきけい
43及び44に掲げるもののほか、尿路奇形Other urinary tract malformations

小児慢性疾患分類

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病気・治療解説

概要

尿路奇形は,発生の段階で生じる形態,位置,数の異常があり,以下のような疾患があげられる。

1) 重複腎盂尿管
2) 異所開口尿管
3) 尿管瘤
4) 巨大尿管症
5) Prune belly症候群

1) 重複腎盂尿管

重複腎盂尿管は最も頻度の高い腎尿管奇形であり,上部腎盂と下部腎盂に由来する尿管がそれぞれ独立して膀胱に開口する完全型と,途中で合流して1本の尿管として膀胱に開口する不完全型がある。
完全型は発生の段階で,胎生4~5週にかけて,中腎管から2本の尿管芽が発生した場合に生じる。2本の尿管は交差し,上部腎盂に由来する尿管は正常より尾側に開口し,下腎盂由来尿管は正常もしくは頭側に開口する(Weigert-Meyerの法則)。
不完全型は,尿管芽が途中で分枝して発生したものであり,中部尿管で分枝するものが半数程度を占める。

診断

反復性尿路感染症や水腎症の精査の際に偶然発見される場合が多い。経静脈性腎盂造影,超音波検査,CT, MRIなどの画像検査で診断するが,異所開口尿管を伴う場合には,膀胱尿道鏡が開口部の同定に有用である。また,排尿時膀胱尿道造影(VCUG)にて,異所開口尿管内や対側尿管あるいは下部腎盂由来の姉妹尿管への逆流を認める場合が多い。

治療・予後

異所開口尿管に伴う逆流症や,閉塞性尿路障害,腎機能障害などの無い症例では治療を要さない。一方,反復性の尿路感染症や,水腎・水尿管症に伴う腎機能障害を呈する症例では,その原因により尿路変更術や腎尿管摘出術が必要となる場合がある。

2) 異所開口尿管

尿管が本来の尿管口以外の部位に開口した状態であり,臨床的には尿管が膀胱三角部側角より尾側,膀胱頸部より遠位の尿路または膣などの性路に開口する場合をいう。女児の方が男児より約3倍頻度が高い。
重複尿管を合併する頻度が高いが,わが国では単一尿管での頻度が70~80%と報告されている。重複腎盂尿管では,上部腎盂由来尿管が異所開口し,女児では約35%が膀胱頸部に,35%は尿道膣角膜付近に,25%が膣内に開口する。まれに子宮やGartner管への開口もみられる。男児では,約50%が後部尿道に,30%が精嚢に,10%が前立腺小室へ,その他射精管や輪精管など精路への開口がみられる。
女児では,尿管性尿失禁や尿路感染症の原因となる。膀胱頸部あるいは近位部尿道に開口する場合は尿管下端の通過障害が強く,高度の尿管拡張を伴う場合が多い。男児では尿失禁はみられないが,尿路感染症や精巣上体炎により発見される場合がある。

診断

注意深い外性器の視察と,超音波検査が有用である。女児の膣開口や尿道開口の場合には,拡張した尿管が膀胱の背側を通り膀胱を越えて尾側まで描出できる。膀胱頸部に開口する場合は, VCUGにて異所開口尿管への逆流を認める場合が多いが,対側の腎盂尿管への逆流や,下部腎盂由来の姉妹尿管への逆流を認める場合もある。CTやMRIは,経静脈性腎盂造影で描出されない形成不全の所属腎を同定することが可能である。尿道内異所開口尿管の診断には,膀胱尿道鏡による尿管口の同定や,尿管カテーテル挿入による逆行性腎盂造影が有用である。

治療・予後

治療は所属腎機能の有無により異なり,単一尿管の膣開口は著しく腎機能が低下している場合が多く,腎尿管摘出術の適応となる。重複腎盂尿管の上部腎盂由来尿管の異所開口の場合,上半腎機能障害を認め,上半腎摘出術の適応となる。腎機能が良好な例では,尿管膀胱新吻合術の適応となる。

3) 尿管瘤

概念

膀胱粘膜と排尿筋の間で尿管が嚢状に拡張したもので,瘤が膀胱内に限局した膀胱内尿管瘤と瘤下端が膀胱頸部あるいは尿道へ伸展した異所性尿管瘤がある。
小児では,重複腎盂尿管の上部腎盂由来尿管の異所性尿管瘤が多く,女児に多い。尿管開口部が非常に小さいために多くは閉塞性となる。

診断

経静脈性腎盂造影(IVP)や超音波検査で,膀胱内に円形の陰影欠損あるいは嚢状腫瘤と拡張腎盂尿管を認める。IVPでは造影されない上部腎盂が拡張し,下部腎盂腎杯の下外側への変位(drooping lily像)が認められる場合がある。また,拡張した尿管と尿管瘤が連続して造影されると,蛇頭に似た像を呈する(cobra head 像)。
VCUGで尿管瘤または尿管瘤に開口する尿管への逆流が認められることはまれであるが,重複尿管の姉妹尿管や対側尿管への逆流がしばしば認められる。確定診断は膀胱内視鏡による。

治療・予後

腎機能障害や尿路感染,排尿障害などの無い例では治療は不要である。これらの障害・症状を認める重複腎盂尿管に伴う尿管瘤では,尿管瘤の切除と付属する尿管が由来する上部腎切除を行う。重複腎盂尿管に伴う尿管瘤で,上部腎機能が残存する場合や,尿路閉塞による腎機能障害の進行が認められる症例では,内視鏡的に瘤への切開を加えることにより減圧が可能であるが,切開後の尿管瘤へ逆流を生じ,腎尿管摘出術や尿管新吻合術などを要する場合が多い。

4) 巨大尿管症

病態に関わらず,顕著に拡張した尿管であり,閉塞性,逆流性,非閉塞性・非逆流性の3つに分類され,それぞれ原発性と二次性がある。

5) Prune belly症候群

先天性腹壁形成不全,尿路奇形,両側停留精巣を3主徴とする先天性疾患で,3.5~5万人に1例の頻度で発生が見られる。95%は男児であり,3主徴以外に,消化管,心肺,骨関節の奇形を合併する場合が多く,これら合併症に対し包括的管理が重要となる。
乳幼児期の管理が可能な例では比較的予後良好であるが,約40%は呼吸不全や敗血症,肺炎,尿路感染症などの感染症または腎不全により乳幼児期に死亡する。
腎尿路の異常として,低異型性腎を約半数に認め,その他,尿道低形成による尿道狭窄,巨大尿管などの高度な下部尿路閉塞を伴う場合が多い。
治療として,全身の包括的管理に加え,尿路奇形に対し,膀胱瘻による尿路変更術,膀胱形成術や尿道形成術などを腎機能温存のための処置が必要である。
新生児期~乳幼児期に適切に腎機能管理が可能な例では,腎機能予後は良好であるが,低異型性腎の合併などにより,約30%以上の症例で成長とともに腎機能障害が進行し,末期腎不全に至ると報告されている。

参考文献

Elder JS. Obstruction of the urinary tract. In Kliegman RM, Stanton B, et al. (Eds.) Nelson textbook of Pediatrics 18th edition. pp2234-2243, Saunders Elsevier, Philadelphia, 2007

小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。

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