おすらーびょう オスラー病Osler-Weber-Rendu disease
小児慢性疾患分類
- 疾患群16
- 脈管系疾患
- 大分類2
- 遺伝性出血性末梢血管拡張症
- 細分類8
- 遺伝性出血性末梢血管拡張症(オスラー病)
病気・治療解説
概要
遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT, オスラー病)は、皮膚・粘膜・消化管の毛細血管拡張病変からの反復する出血、多臓器(脳・脊髄・肺・肝臓)の動静脈奇形、常染色体優性遺伝などを特徴とする多臓器疾患である。
疫学
男女差はなく、5,000-10,000人に1人の発生とされる。国内に約15,000人。
病因
血管新生に関係する2つの遺伝子変異が知られている。Endoglin 遺伝子と ALK-1 遺伝子で、それぞれの変異による遺伝性出血性末梢血管拡張症をHHT1、HHT2と呼ぶ。本邦では、HHT1がHHT2の約2倍の頻度である。脳と肺の病変は、HHT1に多く、肝臓病変はHHT2に多い。HHT1の方が、HHT2 よりも若年で発症する。患者の80-90%は、どちらかの遺伝子変異で起こるが、残りの患者にはこの2つ以外の未知の遺伝子が推定されている。
症状
反復性の鼻血・貧血(鼻腔の粘膜病変による)、脳出血・痙攣(脳の動静脈奇形による)、脳梗塞・脳膿瘍・呼吸不全・肺出血・喀血(肺の動静脈奇形による)、心不全・肝機能障害・肝性脳症(肝臓の動静脈奇形による)、貧血・吐血・下血(消化管の粘膜病変による)、下肢麻痺・四肢麻痺(脊髄の動静脈奇形による)。ほか、頭痛、手指や口腔粘膜・口唇・舌からの出血なども認められる。
診断
遺伝性出血性末梢血管拡張症のCuracaoの診断基準が用いられる。a) 繰り返す鼻出血b) 皮膚粘膜の毛細血管拡張病変(口唇・口腔・手指・舌)c) 肺・脳・肝臓・脊髄の動静脈奇形、消化管の毛細血管拡張病変d) 一親等に同疾患の家族歴4項目があり、3項目以上が該当すれば確診、2項目が該当すれば疑診、1項目以下では、可能性が低いとする。年齢とともに症候性となることが多いため、小児期、特に10歳以下では、この診断基準で、確診・疑診になることは多くはない。 c) 項目に関しては、各臓器の検査によって診断される。脳:非造影と造影のMR検査、肺:非造影のCT検査や経胸壁コントラスト心エコー検査、肝臓:超音波検査や造影のCT検査、脊髄:MR検査、消化管:内視鏡検査。遺伝性出血性末梢血管拡張症の家族歴があれば、小児の場合、無症状であっても、遺伝子検査で遺伝性出血性末梢血管拡張症が否定されない限り、その可能性は残る。
治療
遺伝性出血性末梢血管拡張症そのものへの治療はなく、罹患した臓器それぞれに対し治療が考慮される。鼻出血に対しては、内科的な治療以外に、凝固療法、レーザー治療、粘膜置換法、鼻腔閉鎖術がある。脳の動静脈奇形には、外科的摘出術、血管内治療、定位放射線治療があるが、抗てんかん薬などの投薬を含め保存的な治療が行われることもある。肺の動静脈奇形には、栄養動脈の径が2-3mm以上ある場合には、治療適応とされ、塞栓術が第一選択されるが、限られた症例に外科的切除も行われる。女性の場合には妊娠前に肺の動静脈奇形の治療が勧められる。肝臓の動静脈奇形には、侵襲的な治療は行われず保存的治療が推奨され、塞栓術は適応にならない。脊髄の動静脈奇形には、塞栓術や外科的治療が適応である。消化管出血は、内視鏡的止血術が行われる。鼻出血や消化管出血からの貧血に対し鉄剤の投与や輸血療法が行われる。これらの治療法は、小児慢性特定疾病の医療費助成の対象の治療基準の中の治療法で、「再発予防法」として位置づけられる。
予後
罹患する臓器により予後は異なるが、死亡率は2-4%とされる。
成人期以降の注意点
小児期に遺伝性出血性末梢血管拡張症が診断される機会は2つある。1つは、鼻出血や脳出血などで小児期に発症する場合であり、他方は、遺伝性出血性末梢血管拡張症の家族歴があり、無症状であるがスクリーニングにより病変が発見される場合である。罹患する臓器により経過は異なるが、肺の動静脈奇形は、5-10年毎の定期的な検査が必要である。脳の動静脈奇形に関しては、初回スクリーニングで否定された場合のフォローに関して決まったものはない。
参考文献
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小児慢性特定疾患情報センターhttps://www.shouman.jp/より、許可をいただき掲載しております。
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