ひしょうこうせいこうぶにょうどうかれつ非症候性後部尿道下裂Non-syndromic posterior hypospadias
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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[Orpha番号:ORPHA95706]
男児にみられるまれな非症候群性の先天性尿路系奇形で、尿道口の陰茎・陰嚢部、陰嚢部または会陰部への開口異常を特徴とし、一般的に陰茎の弯曲を伴う。重症例では陰嚢が二分されたように見えることがあり、小陰茎症がみられることもある。
病気・治療解説
疫学
後部尿道下裂は尿道下裂の約5~9%にみられ、出生時の有病率は欧州では1/500と推定されている。
臨床像
尿道下裂では、外観のほかにも、尿が飛散する、立った状態で排尿できないなどの影響があり、陰茎の弯曲は矯正しないと後に性交が困難になる。妊孕性に関する問題や性器の外観に対する不満が多くみられる。重度の尿道下裂とそれに伴う停留精巣は、性分化疾患(DSD)とみなされており、分子遺伝学的評価およびホルモン学的評価のために専門の集学的チームに紹介されるべきである。
病因
後部尿道下裂は、発生8~16週目の尿道発生の初期に生じる。この症状は一般に、遺伝的背景と環境的背景の両方による「複合的」なものであると考えられている。これまでに、MAMLD1 (Xq28)およびAR (Xq12)の2つの遺伝子に孤発性の後部尿道下裂との関連が認められているが、症候群の一症候として、あるいは性腺形異形成の結果として、尿道下裂につながりうる性分化に関わる遺伝子の報告が増えている。
診断方法
診断は陰茎の外観の視診によって下され、通常は生後すぐに診断できる。尿道下裂がDSDの一部である場合は、ホルモン学的、遺伝学的、および解剖学的な評価が必要である。
鑑別診断
鑑別診断としては、女児における先天性副腎過形成、核型がXYの患者ではアンドロゲン不応症候群、ステロイド5α-還元酵素欠損症、17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素3欠損症などが挙げられる。また、Denys-Drash(デニス・ドラッシュ)症候群を除外するために、乳児にはWT1変異のスクリーニングを行う。
出生前診断
陰茎の先端が小さく四角くなっていることがあるため、超音波診断が可能な場合もある。
遺伝カウンセリング
遺伝因子と環境因子が複雑に絡み合っているため、家系内での再発リスクについて判断を下すことは困難であるが、遺伝カウンセリングが推奨される。一般に尿道下裂の場合、患児の兄弟が尿道下裂になるリスクは9~17%である。また、父と息子が罹患している家系では、次の男児が罹患するリスクは25%である。MAMLD1が原因の場合、変異は散発的に起こるか、X連鎖性に遺伝する可能性がある。
管理および治療
最新のガイドラインでは、尿道下裂手術の至適年齢は、重症度や複数回にわたる手術の必要性に応じて9~18ヵ月とされている。後部尿道下裂の手術は依然容易ではなく、すべての患者に適用できる単一の手技はない。弯曲の矯正後、足りない部分の尿道を再建するために、余剰組織を必要とすることが多く、通常は包皮内板、または再手術の場合は頬粘膜を使用する。患児は成人後も泌尿器科医または肛門科医によるフォローアップを受け続けるべきである。
予後
後部尿道下裂および複雑な尿道下裂の治療を受けた患者では、性器の外観について大きな不満が残りやすい。術後は下部尿路症状がよくみられる。後部尿道下裂では射精不能などの性的問題が比較的よくみられる。ただし、生殖能力は低下するものの、性生活は一般に満足できる水準になると考えられている。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Prof Agneta NORDENSKJÃLD
日本語翻訳版の監訳
緒方 勤(IRUD臨床専門分科会 小児科一般 委員/浜松医療センター 院長補佐)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Non-syndromic_posterior_hypospadias_JP_ja_PRO_95706.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/95706
最終更新日:2020年7月
翻訳日:2022年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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