きゅうせいふくじんふぜん急性副腎不全Acute adrenal insufficiency
小児慢性疾患分類
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[Orpha番号:ORPHA95409]
副腎ステロイド(コルチゾールおよびアルドステロン)の突然の産生障害による原発性副腎機能不全。緊急事態を意味するので、診断が下される前であっても、迅速な認識と迅速な治療が生存に不可欠である。
病気・治療解説
疫学
急性副腎不全(AAI)の正確な有病率は不明である。
臨床像
本疾患はあらゆる年齢で発症する。発症は突然である場合が多い。最初の臨床像は非特異的な場合があり、腹痛、悪心、嘔吐、体重減少、頻脈、および発熱に限られることがある。無症候性の低血糖、低血糖性痙攣または脱水症状は小児によくみられる症候である。無治療で放置すると、ショックおよび両側副腎出血により速やかに死に至る可能性がある。
病因
慢性副腎不全の患者では、ステロイドの使用中止がAAIの最も頻度の高い原因である。急性副腎クリーゼの原因となりうる他の病態として、誘因となる疾患(重症感染症、急性心筋梗塞、脳卒中)、ステロイドカバーをしない手術、妊娠、あらゆる急性または慢性疾患、および急性外傷がある。AAIは、慢性原発性副腎不全(chronic primary adrenal insufficiency:CPAI)の急性増悪によって生じる場合もある。副腎の破壊は、自己免疫性副腎炎(アジソン病[Addison disease])に伴うことがあり、自己免疫性副腎炎は孤立性、あるいは自己免疫性多内分泌腺症候群1型、2型、4型の部分疾患として起こる。副腎の破壊は、免疫能低下患者における結核、日和見真菌症、ウイルス感染症のほか、悪性腫瘍の副腎転移に起因することもある。副腎破壊はCPAIの既往なしでも起こる可能性があり、ウォーターハウス-フリードリヒセン症候群(Waterhouse-Friderichsen syndrome)でみられるような両側副腎大量出血(bilateral massive adrenal hemorrhage:BMAH)に起因する場合もある。AAIは、副腎皮質刺激ホルモン (Adreno CorticoTropic Hormone : ACTH )分泌不全が原因である場合もあり、副腎皮質刺激ホルモン分泌不全は単独で起こるより、汎下垂体前葉機能低下症によって起こることの方が多い。慢性的なグルココルチコイド治療(経口プレドニゾロンや吸入ステロイドなどの外因性ステロイド)も副腎不全(二次性副腎不全)の原因となる。治療を突然中止するとAAIに至ることがある。
診断方法
臨床徴候は非特異的であるが、筋緊張低下またはカテコールアミンへの反応が不良なショックがみられれば、AAIが疑われる。臨床検査所見は、副腎不全の徴候(低血糖、低ナトリウム血症および尿中ナトリウム排泄亢進、高カリウム血症、血液濃縮、低クロール性代謝性アシドーシス、および機能性腎不全)を示し、低コルチゾール血症、ACTH高値、および絶対的かつ原発性AAIの診断に至る迅速ACTH負荷試験での反応不良により確定される。鉱質コルチコイドの分泌不全があれば、アルドステロン低値と血漿レニン活性(PRA)高値により確定できる。病因診断は様々な画像検査(CT、超音波またはMRI)に基づく。下垂体前葉機能低下症の場合、ACTHは低値である。
鑑別診断
二次性の副腎不全を除外する必要がある。鑑別診断にはしばしば腹膜炎が挙がるほか、両側副腎切除、ウォーターハウス-フリードリヒセン症候群、自己免疫性副腎炎、感染性の副腎炎など、副腎破壊を引き起こす他の病態も考えられる。
管理および治療
集中治療室での緊急治療が必要である。ヒドロコルチゾン100 mgの静注(それに続き100~200 mgを24時間かけて投与する)と大量輸液(1 L食塩水を最初の1時間で、500 mLを次の1時間で投与する)の併用が副腎クリーゼに対する標準治療である。小児用量は、2 mg/kg/6時間を基準とし、水分・電解質の均衡回復には3 L/m2/日を基準とする。この間、心臓のモニタリングが不可欠である。必要に応じて抗菌薬、昇圧薬、ヘパリン、濃厚赤血球、血小板、クリオプレシピテートおよび新鮮凍結血漿も投与される。予防策としては、CPIAの患者においてストレスのかかるときはステロイドホルモンの増量、筋注、静注、皮下注などが挙げられる。患者および家族は、副腎クリーゼに際して何をすべきかについて教育を受けておくべきである。
予後
予後は病因によって異なるが、一般に診断および医学的介入の迅速さと相関する。患者が適切な医学的介入を受けた場合、死亡することはまれである。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr Juliane LEGER
日本語翻訳版の監訳
長谷川 奉延(難治性疾患政策研究班「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Kyuseifukujinfuzen_JP_ja_PRO_ORPHA95409.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/95409
最終更新日:2019年12月
翻訳日:2021年2月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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