にょうさいかんかんしつせいじんえん・ぶどうまくえんしょうこうぐん(TINUしょうこうぐん)尿細管間質性腎炎・ぶどう膜炎症候群(TINU症候群)Tubulointerstitial nephritis and uveitis syndrome
小児慢性疾患分類
- 疾患群-
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- 大分類-
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- 細分類-
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[Orpha番号:ORPHA91500]
前部ぶどう膜炎を伴う早期発症の尿細管間質性腎炎を特徴とする、まれな尿細管疾患である。
病気・治療解説
疫学
現在までに文献で約200例が報告されているが、実際より少なく報告されている可能性が高い。20歳未満の患者にみられた急性発症の両側性ぶどう膜炎の最大3分の1を占める。女性に多く、男女比は1:2.5~1:5である。
臨床像
発症時期は典型的には小児および青年期(発症年齢の中央値は15歳)であり、ぶどう膜炎(U)または尿細管間質性腎炎(TIN)のいずれかを呈する。腎症状は非特異的で、多尿/多飲、発熱、全身倦怠感、腹痛/側腹部痛、疲労、関節痛、筋肉痛、非特異的な発疹などがある。眼の徴候は眼痛、充血、視力低下、羞明などであるが、ぶどう膜炎が確認された患者の60%近くが無症状である。ぶどう膜炎は典型的には両眼の前部に生じるが、中間部または後部ぶどう膜炎を来すこともある。また、ぶどう膜炎とTINは同時性に発生することもあれば、異時性に発生することもある。
病因
病因は不明であるが、自己免疫起源である可能性が高い。T細胞寛容の喪失と腎および眼球組織における変性C反応性蛋白(modified C-reactive protein)に対する抗体の存在を示す研究結果から、細胞性および液性免疫の役割が注目されている。特定のHLAハプロタイプに本疾患の高リスクとの関連が認められる。
診断方法
診断を確定するための特異的な非侵襲的検査はない。多尿/多飲、血清クレアチニン高値、尿細管損傷を示すマーカー(低分子蛋白など)の高値、尿中好酸球高値、貧血、および赤沈亢進がみられる患者では、本疾患を疑うべきである。腎生検により確定診断が可能である。
鑑別診断
鑑別診断には、二次性の尿細管間質性腎炎およびぶどう膜炎の原因となる感染症(例、結核、EBVやHIVなどのウイルス感染症、クラミジアやマイコプラズマなどの細菌感染症、トキソプラズマ症、ブルセラ症、ヒストプラズマ症など)、サルコイドーシス、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、ウェゲナー肉芽腫症などの肉芽腫性疾患のほか、ベーチェット病、強直性脊椎炎、炎症性腸疾患などを含めるべきである。腎臓の表現型はネフロン癆に類似する可能性があるが、ネフロン癆も(ぶどう膜炎ではないが)眼症候を伴うことがある。
管理および治療
治療は通常は免疫抑制療法による。経口コルチコステロイドが一次治療であり、典型的には開始後数日から数週間で症状に改善がみられる。シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチルなど、他の免疫抑制療法の利用も報告されている。TINU症候群のぶどう膜炎にはコルチコステロイドの外用が有用である。長期合併症の発生に対するモニタリングのために、眼科医によるフォローアップが必要である。
予後
本疾患は大半の患者で軽快するため、予後は良好である。しかしながら、一部の症例は末期腎不全に移行する。視力障害のリスクは低いが、20%の患者で眼合併症(虹彩後癒着、嚢胞様黄斑浮腫、視神経乳頭浮腫、眼圧上昇、白内障など)が報告されている。
翻訳情報
専門家による英語原文の校閲
Pr Detlef BOCKENHAUER
日本語翻訳版の監訳
成田 一衛(IRUD臨床専門分科会 腎疾患 チーフ/新潟大学 腎膠原病内科学 教授)
日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Tubulointerstitial_nephritis_and_uveitis_JP_ja_PRO_ORPHA91500.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/91500
最終更新日:2020年3月
翻訳日:2023年3月
本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。
注意事項
※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。
※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。
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