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かぞくせいしんしゅつせいしょうしたいもうまくしょう
家族性滲出性硝子体網膜症Familial exudative vitreoretinopathy

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
-

[Orpha番号:ORPHA891]

家族性滲出性硝子体網膜症(familial exudative vitreoretinopathy:FEVR)は、まれな遺伝性の硝子体網膜疾患であり、周辺部網膜の異常血管や血管形成不全から多様な臨床像に至ることを特徴とし、軽微な異常で臨床的に全く影響が現れないものから網膜剥離による失明に至るものまで様々である。

病気・治療解説

疫学

FEVRの有病率は不明である。通常は優性遺伝するが、不完全浸透のために多くの無症状の患者が医療機関を受診していない可能性がある。男性だけが罹患するX連鎖型を除き、男女が同等に罹患する。

臨床像

FEVRの臨床像には、同一家系内の患者間で、また左右の眼の間でさえ、大きな違いがみられる。多くの患者では、網膜の異常によって視力が障害されることはない。症状のあるFEVR患者のほとんどは、若年で周辺視の障害や光視症、飛蚊症で発症する。主な他覚的所見は未熟児網膜症(この用語を参照)に類似し、大きなκ角、網膜剥離、後部網膜血管の伸長、視神経乳頭の牽引、網膜ひだなどがみられる。これらの眼の異常に続発して、網膜新生血管および滲出斑、網膜および硝子体出血、硝子体網膜牽引、黄斑偏位、白内障などの合併症が現れる。斜視および白色瞳孔も報告されている。重症の臨床像を呈する患者は、しばしば乳児期早期に光覚なしと診断される。一部の患者(LRP5変異)では骨量減少による易骨折性が報告されている。

病因

FZD4遺伝子(11q14-q21)またはLRP5遺伝子(11q13.4)の変異は、ZNF408遺伝子(11p11.2)と同様、常染色体優性FEVRの原因となることが報告されている。LRP5は劣性の症例の原因となることも報告されている。X連鎖劣性FEVRは、NDP遺伝子(Xp11.4-p11.3)の変異を伴う。一部の優性または劣性の症例は、TSPAN12(7q31.31)と関連することが報告されている。約50%の症例で、FEVRを引き起こす遺伝子変異が不明である。

診断方法

20歳までに発生しうる重篤な合併症を避けるため、早期診断が非常に重要である。診断は眼科的および一般的な病歴(在胎期間、出生体重など)に基づき、眼科的診察では十分な散瞳状態のもと細隙灯顕微鏡および眼底検査で周辺部網膜の無血管野の有無を評価し、可能であればフルオレセイン蛍光眼底造影を施行する。家系内で妥当な遺伝パターンが見つかれば診断に有用であり、診断は分子遺伝学的検査により確定できる。

鑑別診断

主な鑑別診断は未熟児網膜症(この用語を参照)であるが、通常は在胎期間から除外できる。その他の類似の病態としては、Norrie病、Coats病、第一次硝子体過形成遺残(これらの用語を参照)などがある。

出生前診断

FEVRは遺伝的および臨床的に多様な疾患であるため、出生前診断は困難である。また、本疾患の出生前診断を求められることもまれである。

遺伝カウンセリング

本疾患で最も頻度の高い遺伝形式は常染色体優性遺伝であるが、より頻度は下がるものの、X連鎖劣性または常染色体劣性の遺伝形式もみられる。浸透率がかなり低いことが報告されている。罹患者家族にはこのことを踏まえた適切な遺伝カウンセリングを提供すべきである。

管理および治療

原因となる変異が同定されている家系には、発症前検査を勧めることができる。網膜剥離の治療には標準的な外科的アプローチが使用されるが、成績にはばらつきがある。虚血に起因する新生血管を減らすため、予防的な冷凍凝固術またはアルゴンレーザー光凝固術が推奨される。症状のある患者には、定期的な眼底検査が推奨される。無血管野があるが無症状の小児および若年成人には、年1回のモニタリングを行うべきである。

予後

FEVRの臨床像は非常に多様である。本疾患の一般的な経過は定まったものではないため、予後の予測が困難である。重症例では進行性の視力障害が報告されている。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr F.N. [Nienke] BOONSTRA、Dr Rob COLLIN
日本語翻訳版の監訳
近藤 寛之(産業医科大学眼科学教室)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Kazokuseishinshutsuseishoushitaimomakusho_JP_ja_PRO_ORPHA891.pdf
英語原文URL
http://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=EN&Expert=891

最終更新日:2014年1月
翻訳日:2019年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断(出生前診断・着床前診断を含む)・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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