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とりーちゃー・こりんずしょうこうぐん
トリーチャー・コリンズ症候群Treacher Collins syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA861]
まれな遺伝性下顎顔面異骨症で、両側対称性の上下顎の形成異常を特徴とし、頬骨の発育不良(頬低形成)、非常に小さな下顎(小顎症)および下方に傾斜した眼瞼裂、下眼瞼の欠損、小耳症、難聴を伴い、四肢の異常を伴わない。知能は正常である。

病気・治療解説

臨床像

特徴的な顔面異形症を呈し、両側対称性の低形成が頬骨および眼窩下縁(症例の80%以上)と下顎(78~97%)(下顎後退症)にみられ、後者は不正咬合に至り、しばしば様々な程度の口の開きの制限が特徴的となる。軟部組織の顕著な低形成が頬骨部、眼窩下縁、および頬にみられる。眼症状には、下方に傾斜した眼瞼裂(89%~100%)、外側3分の1から中央の間にみられる下眼瞼コロボーマ(54%~69%)、下眼瞼の外側3分の1の睫毛欠如などがある。両側性伝音難聴が頻繁にみられる(83%~96%)。小耳症または無耳症(77%)などの外耳異常は、しばしば外耳道閉鎖および中耳耳小骨異常(60%)と関連する。上気道の狭窄と開口制限により、生後数年間にわたり呼吸および栄養摂取に困難が生じる場合がある。ときに、高口蓋、口唇裂を伴うまたは伴わない口蓋裂(21~33%)、および片側性または両側性の後鼻孔の狭窄または閉鎖(13~25%)がみられる。比較的まれな症状としては、唾液腺の異常とそれに続く粘膜の乾燥、内軟骨腫および/または耳珠前瘻孔、脊髄および心臓の異常などがあり、典型的には知能は正常であり、身体障害または運動発達の遅延はまれにしか報告されていない。

病因

本症候群は、核小体のリン蛋白であるtreacleをコードするTCOF1遺伝子(5q32)、またはRNAポリメラーゼIおよびIIIのサブユニットをコードするPOLR1C(6p21.1)もしくはPOLR1D(13q12.2)、POLR1B (2q14.1)遺伝子の変異により生じる。注目すべきことに、先端顔面異骨症の同様の表現型がPolR1Aと関連している。

診断方法

診断は臨床所見と補完的な診察の所見に基づく。分子遺伝学的検査により診断が確定する。

鑑別診断

鑑別診断には、四肢の前軸欠損を特徴とするNager症候群(先端顔面異骨症)、四肢の後軸欠損を特徴とするミラー症候群 (Miller syndrome)、両側およびわずかに非対称な形の眼-耳-脊椎スペクトル、Burn-Mckeown症候群 (Burn-Mckeown syndrome)がある。

出生前診断

家系内で病原性変異体が同定されれば、絨毛膜検体(CVS)および羊水の分子遺伝学的解析により出生前診断が可能であり、着床前検査も可能である。出生前超音波検査では、典型的な顔面の形態異常と両側性の耳介異常が判明することがある。

遺伝カウンセリング

遺伝形式は主に常染色体優性であり、浸透率は90%、家族内および家族内外の表現度はさまざまである。POLR1CおよびPOLR1D遺伝子に病原性変異がある場合、遺伝様式は常染色体劣性である。表現度が多様であることから、遺伝カウンセリングは複雑となり、集学的な出生前診断チームと協議すべきである。

管理および治療

管理は集学的に行われる。出生後に呼吸窮迫がみられる症例では、気管切開、非侵襲的換気(NIV)療法、または下顎骨延長術について話し合うべきである。上顎顔面手術と形成外科手術により、軟部組織の低形成(脂肪構造による顔面の輪郭の矯正)、骨低形成(外科的骨延長、骨移植)、眼瞼コロボーマ、および口蓋裂(外科的修復)を矯正することができる。開口制限の治療は非常に困難である。中耳の異常(機能改善手術)および外耳の異常(外耳再建)に対しては、専門の耳鼻科手術が必要である。正常な発達を助けるために、聴覚障害の管理(補聴器の使用と機能改善手術)は早期に行うべきである。

予後

比較的軽症型の予後は、十分な治療により良好となる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Corinne COLLET | ITHACA*
日本語翻訳版の監訳
小崎 健次郎(難治性疾患政策研究班「先天異常症候群領域の指定難病等のQOLの向上を目指す包括的研究」)
金田 秀昭(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)
日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/TreacherCollinsshokogun_JP_ja_PRO_ORPHA861.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/861

最終更新日:2020年12月
翻訳日:2021年2月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、診断・治療・遺伝カウンセリング等に関する内容が日本の現状と合っていない場合や国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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