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にゅうとうじょうかんかんのうほうせんしゅ
乳頭状汗管囊胞腺腫Syringocystadenoma papilliferum

小児慢性疾患分類

疾患群-
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大分類-
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細分類-
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[Orpha番号:ORPHA840]
血液または骨髄中に異常なBリンパ球(中型の細胞で、豊富で不整な淡い細胞質、毛状の細胞質突起/波立った細胞質境界、球状または豆状の核、核小体の欠如を伴う)がみられ、脾臓および末梢血中の汎血球減少、著明な単球減少、顕著な易感染性を特徴とする、緩やかに進行するまれなタイプの慢性白血病である。特徴的な免疫表現型は、CD11c+、CD25+、CD103+、CD123+で、ほとんどの症例でBRAF変異を認める。

病気・治療解説

疫学

これまでに約730例が報告されている。本疾患は世界中で報告されている。

臨床像

乳頭状汗管囊胞腺腫(SCAP)は、出生時からみられるもの(全症例の50%)と、思春期ごろに発生するもの(全症例の15~30%)がある。典型的なSCAPは、緩徐に進行する表面平滑で肌色からピンク色をした非特異的な丘疹、疣贅または結節として現れ、滲出液を伴うこともある。また、平坦なまたは隆起した、通常は直径4 cm未満の、脱毛を伴う肌色から褐色の局面として現れることもある。まれに色素沈着を伴う。大半は無症状であるが、進行性に増大することがあり、ときにそう痒、疼痛および/または出血を伴うことがある。局面型、線状型および孤立結節型の3つの臨床病型が報告されている。局面型は通常、脱毛を伴う頭皮の局面として生じ、思春期に増大することがあり、しばしば結節性または疣状病変に移行する。線状型は、直径1~10 mmのピンク色から赤色調の硬い丘疹ないし凹んだ結節が多発するもので、極めてまれである。孤立型は、直径5~10 mmの有茎のドーム状小結節がみられるもので、体幹、肩および腋窩に好発する。まれに分節型がみられる。75%の症例でSCAPは頭部または頸部に発生し、頻度は下がるものの、その他の部位や術後瘢痕に発生することもある。SCAPは約3分の1の症例が既存の脂腺母斑の中で発生し、そのうち10%は基底細胞癌を合併し、頻度は下がるものの、その他の癌の発生を伴うこともある。また、SCAPは他の良性病変を伴うこともある。悪性腫瘍への移行はまれであるが、ないわけではない。乳頭状汗管囊胞腺癌は、この病変に対応する悪性病変であり、罹病期間の長いSCAP症例で発生することがある。

病因

SCAPの病因は解明されていない。アポクリン系とエクリン系のいずれにもなりうる多能性細胞から発生すると考えられているが、アポクリン系への分化の方がより一般的である。SCAPの病態生理は不明であるが、孤発例か脂腺母斑に生じた病変かにかかわらず、ヒトパピローマウイルス(HPV)DNAとRAS/マイトジェン活性化プロテインキナーゼのシグナル伝達経路における変異が検出されている。孤発例ではBRAF V600E変異またはHRAS(または1例ではKRAS)の活性化変異が報告されている。

診断方法

診断は、はっきりしない外観の病変から臨床的に疑われ、生検で特徴的な組織所見を認めることで確定される。免疫組織化学検査では、腫瘍細胞は癌胎児性抗原染色陽性となる。ダーモスコピーでは診断できない。

鑑別診断

鑑別診断は幅広く、組織学的な確認が必要である。診断上の主な問題は、SCAPと乳頭状汗腺腫の鑑別である。検討すべきその他の疾患として、基底細胞癌、皮膚リンパ腫、人工皮膚炎、ウイルス性疣贅、皮下真菌感染症、線状疣贅状表皮母斑、化膿性肉芽腫、疣贅状異常角化腫(warty dyskeratoma)、反転性毛包角化症(inverted follicular keratosis)、エクリン母斑、面皰母斑、円柱腫、基底細胞様毛包過誤腫(basaloid follicular hamartoma)などがある。

管理および治療

治療は外科的な完全切除による。しかしながら、再発がよくみられる。切除や移植が難しい解剖学的領域の病変には、炭酸ガスレーザーによる治療が有用となる可能性がある。また、SCAPに対するモース顕微鏡手術による治療成功例もある。

予後

本疾患は大半が良性であるが、広範囲に及ぶ病変はQOLに影響を与える可能性があり、悪性腫瘍への移行の可能性も除外できない。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Alexander KATOULIS
Pr Efstathios RALLIS
日本語翻訳版の監訳
古庄 知己(IRUD臨床専門分科会 臨床遺伝 委員/信州大学医学部遺伝医学教室 教授)

日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Syringocystadenoma_papilliferum_JP_ja_PRO_ORPHA840.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/consor/cgi-bin/OC_Exp.php?lng=en&Expert=840

最終更新日:2021年2月
翻訳日:2022年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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