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すてぃっくらーしょうこうぐん
スティックラー症候群Stickler syndrome

小児慢性疾患分類

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[Orpha番号:ORPHA828]
眼、聴覚、口腔顔面および関節の症状を特徴とする、まれな遺伝性結合組織疾患の一群である。2つある主要な臨床病型は、硝子体の表現型によって臨床的に区別され、スティックラー1型では、水晶体すぐ後方の空間に、折り畳まれた境界明瞭な膜で縁取られた硝子体の遺残が認められ、スティックラー2型では、硝子体腔全体にまばらで不規則に肥厚した線維束が認められる。

病気・治療解説

疫学

出生時の有病率は約 1/7,500~1/9,000と推定されている。

臨床像

眼症候としては、網膜剥離の高いリスク、先天的な硝子体形成異常、先天性近視、先天白内障などがある。成人期に網膜傍脈管格子状変性(retinal paravascular lattice degeneration)が生じることもある。口腔顔面の特徴には、Pierre-Robinシーケンス(PRS)、口蓋裂、中顔面低形成などがある。また、先天性の高周波帯域の感音難聴がよくみられ、様々な伝音難聴が生じる可能性もある。筋骨格系の問題としては、脊椎異常、可動性亢進、骨端異形成症、早発性変形性関節症などがある。ほかに、眼症候のみ(常染色体優性裂孔原性網膜剥離)または全身症候のみ(スティックラー症候群3型)を特徴とする2病型がある。

病因

スティックラー症候群は遺伝性の結合組織疾患で、II型(COL2A1、12q13.11)、IX型(COL9A1、6q13;COL9A2、1p34.2;COL9A3、20q13.33)、およびXI型(COL11A1、1p21.1)コラーゲンをコードする遺伝子の変異が原因となる場合が最も多いが、まれにコラーゲン以外の遺伝子の変異も報告されている。

診断方法

診断は臨床像と眼科的診察に基づいて行われ、分子遺伝学的解析により確定できる。他の臨床的特徴の多くは類似しているため、硝子体の表現型が病型の鑑別に役立つ。

鑑別診断

診断は臨床像と眼科的診察に基づいて行われ、分子遺伝学的解析により確定できる。他の臨床的特徴の多くは類似しているため、硝子体の表現型が病型の鑑別に役立つ。

出生前診断

出生前診断が可能な場合がある。妊娠第1トリメスターの出生前診断は、関連するマーカーの分析に基づいて可能な場合がある。第2トリメスターでは、小顎症や口蓋裂などの特徴の検出に超音波検査が役立つ場合があるが、これらがないことで本疾患を除外できるわけではない。

遺伝カウンセリング

スティックラー症候群1型および2型の遺伝形式は常染色体優性であり、子供に疾患が遺伝するリスクは50%である。常染色体劣性形式もまれにみられるが、血族婚の経歴がないかを考慮すべきである。ただし、本疾患の臨床像は非常に多様である。浸透率は高いが、眼以外の臨床像には大きなばらつきがある。

管理および治療

管理は集学的に行うべきであり、臨床像が非常に多様であるため、治療は症例ごとに個別化する必要がある。PRSまたは口蓋裂のある患者は、評価および管理のために口蓋裂の専門医から成る集学的チームに紹介する必要がある。これには、無症候性の口蓋裂または軟口蓋裂を有する患者への言語療法も含まれる。屈折異常があれば矯正し、高リスクの病型では予防的な網膜復位術(retinopexy)について協議すべきである。スティックラー症候群1型では、網膜復位術によって巨大裂孔網膜剥離のリスクが大幅に低下する。患者には網膜剥離の徴候および症状について注意を促し、そのような事態が発生した場合の硝子体網膜専門医への迅速なアクセスを確保しておくべきである。白内障がよくみられ、外科的管理には(小児では特に)専門的なケアを要する。口蓋裂チームがまだ聴覚評価を行っていない場合は、この検査のために、すべての患者を専門医に紹介すべきである。患者は、特に出生時から難聴がある場合、無症候性の難聴に気づいていないことがある。知能は正常であるが、言葉を話す前の子供には、聴覚および視覚障害のため追加の教育的支援が必要になる場合がある。合併する関節症に対しては、膠原病科および整形外科による専門的な管理を要する場合がある。

予後

本疾患の予後は一般に良好である。余命への直接の影響はない。生活の質は臨床像、診断時年齢のほか、視力障害、難聴、言語障害、関節症の合併があれば、それらの程度によっても異なる。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Dr Martin SNEAD
Dr Aijing WANG
日本語翻訳版の監訳
小崎 健次郎(難治性疾患政策研究班「先天異常症候群領域の指定難病等の QOL の向上を目指す包括的研究」)
小島 伸介(公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター)

日本語版URL
https://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Stickler_syndrome_JP_ja_PRO_ORPHA828.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/828

最終更新日:2021年4月
翻訳日:2022年3月

本要約の翻訳は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの資金援助の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本 語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異な る場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が 必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢 性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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