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れっとしょうこうぐん
レット症候群Rett syndrome

小児慢性疾患分類

疾患群-
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[Orpha番号:ORPHA778]

まれな重度かつX連鎖性の神経発達障害で、乳児期の急速な発達退行、手の合目的的運動の部分的または完全な喪失、発語の喪失、歩行異常、および手の常同運動を特徴とし、一般的には頭部成長の減速、重度の知的障害、痙攣発作、および呼吸異常を伴う。本疾患は進行性の臨床経過をたどり、消化管疾患や脊柱側弯症、行動障害などの様々な併存症を伴うことがある。

病気・治療解説

疫学

本疾患は出生女児10,000人当たり約1例に発生する。本疾患はときに男性例の報告もあり、その場合は通常、出生前または乳児期早期に死に至る。

臨床像

古典的または典型的なレット症候群(RTT)は、主に女児が発症し、生後6~18カ月の間に一見正常な精神運動発達を示した後に、言語および運動能力の急速な退行を伴った発達停滞がみられるのに続き、技能の獲得が長期的に停滞することを特徴とする。反復的な手の常同運動がみられるようになり、手の合目的的使用がなくなる。その他の所見としては、自閉症的特徴、パニック様発作、歯ぎしり、発作性の無呼吸および/または過呼吸、歩行失調および失行、振戦、痙攣発作(60~80%)、後天性の小頭症などがある。進行速度と重症度に大きなばらつきがある。古典的RTTの女性と同等の表現型をもつ男性症例が複数報告されている。

病因

古典的RTT症例の95%以上でX連鎖遺伝子(Xq28)であるMECP2(methyl CpG-binding protein 2)の病的バリアントが認められる。最も頻度の高い変異にはCpGジヌクレオチドでのCからTへの変異が関与するが、変異のスペクトラムにはミスセンス変異、ナンセンス変異、フレームシフト変異が含まれ、エクソン全体の欠失のほか、固有の病的な配列変化が300以上報告されている。男性および女性患者において、古典的RTTとは異なる表現型がMECP2の病的バリアントとの関連で報告されている。

診断方法

RTTの臨床診断はコンセンサス臨床基準に基づく。具体的には、1つの必須基準(すなわち退行の存在)と、典型的RTTの診断に不可欠とされる4つの主要基準である(i)習得した手の合目的的技能の部分的または完全な喪失、(ii)習得した発話の部分的または完全な喪失、(iii)歩行異常、(iv)手の常同運動が含まれている。遺伝子検査では典型的RTT患者の95~97%でMECP2のバリアントが同定されるが、遺伝子検査はRTTの診断に必須ではない。

鑑別診断

鑑別診断には、自閉スペクトラム症、生後6カ月未満の早期発達に異常がみられるアンジェルマン症候群(Angelman syndrome)、早期発症の痙攣発作という点がRTTと大きく異なるCDKL5欠損症、ならびにRTTでは通常みられない先天性の小頭症および脳梁異常が生じるFOXG1症候群が含まれる。

出生前診断

発端者に病的変異がみられる家系では、出生前スクリーニングについて話し合うべきである。

遺伝カウンセリング

生殖細胞系列モザイクが報告されてはいるが、RTT患者にみられるMECP2の病的変異は大半がde novo変異であるため、将来の妊娠に対する再発リスクは低い。

管理および治療

管理は主に対症療法であり、集学的アプローチを通して各患者の能力を最適化することに焦点を置く。効果的なコミュニケーション戦略に加えて、脊柱側弯症や痙縮の発生にも注意を払うべきである。家族に対する心理社会的支援が不可欠である。薬理学的アプローチでは、睡眠障害、呼吸障害、痙攣発作、常同運動、および全般的ウェルビーイングの改善を目指す。RTT患者はQT延長による致死性不整脈のリスクが高まっていることから、いくつかの薬剤を回避することが推奨される(例、マクロライド系抗菌薬)。

予後

臨床像は数年かけて段階的に進展していく。患者は中年期以降まで生存すると報告されている。

翻訳情報

専門家による英語原文の校閲
Pr Nadia BAHI-BUISSON
Dr Andreas BRUNKLAUS
Pr Rima NABBOUT

日本語翻訳版の監訳
丸山 幸一(IRUD 臨床専門分科会 神経・筋疾患委員/愛知県医療療育総合センター・中央病院 小児神経科部長)

日本語版URL
http://www.orpha.net/data/patho/Pro/other/Rett_syndrome_JP_ja_ORPHA778.pdf
英語原文URL
https://www.orpha.net/en/disease/detail/778

最終更新日:2021年1月
翻訳日:2024年3月

本要約の翻訳は、未診断疾患イニシアチブ(IRUD)臨床専門分科会に所属される専門医や、その他の希少疾患専門医のご協力の下で行われています。

注意事項

※本要約は情報の提供を唯一の目的として公開しているものです。専門医による医学的ケアの代わりとなるものではありません。本要約を診断や治療の根拠とすることはお控えください。

※この情報は、フランスのOrphanetから提供されており、原文(英語)がそのまま日本語に翻訳されています。このため、国内で配信されている他の媒体と一部の内容が異なる場合があります。保険適用に関する診断基準など、国内の医療制度に準拠した情報が必要な場合は、厚生労働省の補助事業により運営されている難病情報センターや小児慢性特定疾病情報センター等の専門情報センターのホームページをご参照ください。

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